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仙流復活祭
Offense Heart
「ただいま」
部活から帰って来た仙道が部屋に入ると、驚いた顔で動きが止まった。
否、流川が居るのはシューズが玄関にあったから判っていたが、その彼が思いも寄らぬ事をしていたのだ。

「…何つっ立ってんだ、アンタの部屋だろ」
顔を上げた流川がそう言うと、仙道は彼の所にやってくる。
「何だよー、『お帰りv』位言ってくれよー…」

「────……オカエリ。」

敢えて機械的に返されて苦笑するも、仙道は流川の肩の辺りから彼の手元を覗き込んだ。
「珍しいじゃん、勉強なんて」

「一年最後の期末だから、赤点取ると進級出来ねー。補習になるとバスケ出来ねー」

成程、そりゃ流川でも真面目にやるか…と思っていると、服を引っ張られた。
「ここ、教えろ」
「んー?」

問題をさっと読んで、流川の隣、それも腕が触れ合う位置で教え始める。
仙道にとっては去年やった所で容易いけれど、授業中寝てしまう事の多い流川には、難問になってしまうらしい。
出来るだけ噛み砕いて教えてやれば、元々素地が悪い訳ではないので、ちゃんと理解してくれる。
そんな調子で幾つか教えると、仙道の腹が鳴って、流川は気付いた様に言った。

「あ、ワリィ……これ、持ってきたから」
古風に風呂敷に包まれた二段お重を流川がテーブルに乗せる。
「え、何これ、すげーじゃん」

開けてみると色々なおかずと、おにぎりが入っていた。
「オフクロが……世話になりっ放しじゃ申し訳ねーって」
「そんな気ィ遣わなくても良いのにな…でも有難いよ、今から用意すんの億劫だし」

そんな訳で、一旦教科書だのノートは下に置いて、取り皿と箸とペットボトルのお茶を出してきて、食事を始める。

「旨いよ流川、お袋さんに礼言っといてな♪」
そう言ってニコニコと食べる仙道と、いつもの味をいつもの様に食べる流川。
そのうちに重箱二つ、綺麗に空になった。


仙道が洗い物をしていると、流川はまた勉強を再開した。
戻って来た仙道に、彼は顔だけ振り向ける。
「仙道、ここ……」
そうしてまた、仙道が教えてやる勉強会になった。


「期末のスケジュール、どーなってんの」
訊かれて、流川はバックからプリントを出した。
「へー…ウチとは違うな。どれが危ねーんだ?」
自分だけの勉強では危なそうな科目を幾つか指差す。

「取り敢えず赤点じゃなきゃいー」
「……んじゃ、来週末と試験中か……来るか?」

すると流川の表情が明るくなった。
それは仙道だから解る程度の差なのだが。

「いーのか?アンタの勉強は…」
「日程違うし、オレは取り敢えず、授業ちゃんと聞いてるし?」
その言い草に流川はちょっとムッとする。
しかし反論は出来ないので、一言ボソッと言った。
「……助かる」

流川なりに気ィ遣ってんだなーと、仙道はちょっと意外な新鮮さを感じた。



そんな訳で、二人の逢瀬は当座、勉強会に終始した。
デートと言うにはちょっとアレだが、それでも週一以外にも流川と逢えるのは嬉しかった。


そうして試験最終日、流川は取り戻すかの様にバスケ三昧になったのは、言うまでもあるまい。

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