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仙流復活祭
想いの行方(2)
勢いで、言われるままにバックを持って走り出せば、大して間を置かずに大粒の雨が落ちてきた。
一般人に比べて悠に速いスピードだったが、仙道の部屋に着く頃には二人共ズブ濡れになってしまった。

仙道が流川を中に入れて浴室に向かわせ、自分はタオルで拭きながら、流川の分の色々を用意してやる。
流川と入れ違いに風呂場に入る仙道が彼に声を掛けた。
「コーヒー、出来上がったら注いどいてくれるか?」
流川はコクンと頷いて、取り敢えずテーブルの脇に座った。

珈琲が少しずつ落ちていく様をボンヤリと見ていたら、そのうちに出来上がりの音がして、流川はサーバーを外した。
流川がこの部屋に来る様になってから、彼の為のマグカップが増えていて、仙道の分と共に二杯注ぐ。
するとそれを見越した様なタイミングで仙道が浴室から出てきた。

彼は流川を見てホッとした表情をする。
帰ってしまうとでも思ったのだろうか、外はまだ雨だというのに。

流川は自分の分にミルクとシュガーを入れる。
ブラックの仙道の部屋にその二つが置いてあるのも流川の為だった。

窓の外の雨を眺めてから仙道に視線を戻すと、トレードマークのツンツン髪が下ろされていて、何度か見ている姿とは言え、何となく別人みたいだ。
暫く仙道の雑談に相槌で応えていると、彼はゴソゴソとテレビの下のラックを漁った。

「NBAのビデオ、観るか?」
コクンと頷くだけの流川に、仙道はビデオをセットして二人でそれを観始める。

ふと、床についている仙道の大きな手に指が触れた。
流川はドキッとしてその手を引っ込める。

「どうした?集中出来ねーみてーだな」
前回の事もあり、流石に仙道も流川の調子が変だと感じた。

「別に……」
言い淀む流川に、仙道が彼の顔を覗き込み、額に手を当てる。
ビクンと震える流川を変だとは思ったが、その手を引いてまずは尋ねた。
「熱はねぇみてーだけど、調子悪いのか?」

心配そうな仙道に、流川は覚悟を決めたのか、少し間を置いてからボソッと言った。



「………オレ……変なんだ」
「────何が?」

短い流川の言葉から全てを察するのは難しく、仙道は聞き直した。

「訳解んねー……」

本人に解らない事を、どう理解しろと言うのか。
暫く彼を見つめていた仙道は、言い直した。
「……オレも解んねーから…具体的に何があったのか言ってみな?」

まるで子供に諭すみたいで、流川はちょっとムッとした。
こんな所でも負けず嫌いが発揮されるのか、彼はキッと睨んだ。


「……アンタの事ばっか頭に浮かぶ」
「………へ?」
「どんだけアンタを倒してーのかって思った」
「……うん」

意味合いを探るみたいに、仙道は慎重に応じた。
すると流川は俯いて黙り込み、それから思い切った様に顔を上げた。

白い肌がピンクに染まっているのに目を見張れば、流川の綺麗な顔がどアップになったかと思うと、唇に柔らかい物がそっと触れて離れた。

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あきゅろす。
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