[携帯モード] [URL送信]

仙流復活祭
冬の太陽(7)
「ただいま…」
待ちかねた様に出て来た母親が、息子の後から入って来た仙道に挨拶をする。

「いらっしゃい、いつも楓がお世話になって……まぁー、写真よりイイ男だわー……さ、どうぞ」
「初めまして、仙道です」
ペコリとお辞儀をして、流川の母親に促されるままに、中へ上がった。

母親の質問や雑談に付き合い、父親が帰ってきてから一緒に夕食を摂った。
それから流川と彼の部屋へと引っ込んだのだが、まずは仙道のウケは良かった様で、特に母親には気に入られた様子だ。
父親は流川と似て口数の少ない人だが、悪くは思われていないと思う。
流川の顔は母親似の様で、彼女も和の美人だ。

仙道は、流川の事をまた少し知る事が出来て嬉しかった。


「……オフクロはうるせーけど、アンタは負けてねーな」
「おまえの口数の方が少ねーんだろ。お袋さん位、普通だろ」
「悪かったな…」
ブスッと言う流川に、仙道は彼の頭を抱いた。

「気にしてたのか?」
「気になんかしてねー、オレはオレだ」
「そうだな」
仙道は流川の髪にそっとキスをした。


流川の部屋は、ベッドの他は見事な位バスケオンリーだ。
机はあるにはあるが、バスケ雑誌が重なっていて、勉強なんてしているとは思えない。
唯一それらしい物と言えば、英会話の冊子だろうか。

「……英会話は出来んのか?」
「簡単なモンだけだ。アメリカ行こうと思ってたから」
「……今は?」

過去形な言い回しが気になって訊けば、少し間を置いてから答えが返ってきた。
「………安西先生に…まず日本一の高校生になれって言われた。インハイでも優勝出来ねかったし、まだアンタにも勝ってねー。だから今年は日本一になってやる」
『君はまだ仙道君に及ばない』と言われた事は、悔しいから言わない。

成程、と思いつつ、流川にしては長い台詞にも妙に感心した。

ウインターカップは三年生は受験の為に引退してしまう。
三井は残ったけれど、次は卒業だ。
あとは宮城をキャプテンに流川、桜木位しか湘北には人材が居ない。
春にどんな一年生が入るかが来年の勝負だ。

陵南は魚住、池上が抜けた。
海南でも神奈川No.1争いをした牧が抜けるので、多少なりとも高校バスケの範図は変わるだろうか。
海南が強敵なのは変わりあるまいが、高校バスケは一年一年が勝負だ。

バスケはチーム戦なので、幾ら優れた人材が居ても、一人では勝てない。
それは仙道自身も身に染みている筈なのだ。

「オレも高校最後の一年だ、負ける気はねぇ」
「アンタはオレが倒す。誰にも渡さねー」

そう返されて、仙道の目が見開いた。
「……何か、情熱的な告白みてーだな」
クスクス笑うと、流川にポカッと殴られてしまった。

「茶化してんじゃねー、オレは真剣だ」
「バカヤロウ、オレだって真剣勝負だ」

絶対に流川に負けられない。
彼の目に、ずっと自分が映る為にも。

「───ならいー」
ボソッと言うのに、仙道は何だか可笑しくなって、必死に笑いを堪えた。

するとそんな所にノックの音がして、母親の声がした。
「楓、布団持ってきたから開けて」
そう言われてドアを開けてやると、羽根布団一式を抱えた彼女がベッドの脇に置いた。

[*前へ][次へ#]

7/9ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!