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仙流復活祭
一緒に。
クリスマスイブを家族と過ごし、翌日から冬休みに入った流川は、仙道の元へ───と行きたいのは山々なのだが、師走と名の付く年末だ、背の高さを良い事に大掃除だの買い出しだのと散々使われた。
勿論それ以外を練習に使ったけれど、正月準備は料理を残すのみになった所で漸く手伝いから解放された。

そうして29日の午後、流川はバックを抱えて母親に言った。
「仙道んトコ行く」
「一日に帰ってくるのね?」
流川はそれに頷いて、単語だけで応える。
「……夕方」

誕生日と言えど、それが新年早々の限界だ。
元日だけに、初詣を建前にこれまでは仙道と逢っていた。

「あ、楓、ちょっと待って」
何だと思って振り向けば、母が財布から五千円札を出した。
「アンタ仙道君の誕生日、さっさと出ていっちゃったでしょ。代わりに何か食べたい物でも食べさせてあげて」
「解った」
「アンタの誕生日もちゃんとケーキ買っておくわよ?」

流川はもう一度頷くと、「行ってくる」と一言告げて家を出た。
「いってらっしゃい」と応じた母親は、息子が消えたドアを見つめてこっそり思う。

あの短い言葉で会話を成立させてしまう息子は、ある意味頭が良いのではないだろうか。
なのに成績に反映されないのは、サボるとそこから解らなくなる為と、彼の興味によるものだろう。
バスケにしても、応用も機転も利くからこそ優れた選手なのだ。

(……素地は悪くないんでしょうけどねぇ……)

母は溜め息をついてしまうが、一つ取り柄があれば良いかと思い直す。
そして彼女は一休みする為にリビングに戻った。



電車の中で気が付いて、流川はメールを打った。
受け取った仙道がいつもの様にタイトルなしのそれを開くと、「行く」という二文字だけの内容に笑みを浮かべた。

(この短さ、ある意味才能だよなぁ…)
そんな事を思いながら、大事そうに専用のホルダーにしまっておく。
それから彼を迎える為、切らした物はないか確認して、近所に買い物に出た。

戻ってきて直ぐにお茶を出せる準備をして、仙道は携帯で電話を掛けた。
「あ、仙道です、こんにちは。実はウチの────」

そうして用件を話し、挨拶をして電話を切る。
発信履歴に残った名は“流川宅”だった。


そんな所にチャイムが鳴って、仙道は迎えに出る。
勿論流川の到着だ。

「鍵開けて入って良いんだぞ?」
「……居ねー時はそーする」

バックを置いてコートを脱ぐ流川にハンガーを渡す。
一緒に掛けられた白いマフラーに笑みを浮かべて、仙道は紅茶を淹れて出してやる。

「年末一緒に過ごせんの初めてだな。手伝い大変だったんだって?ここも一応大掃除終わらせたから、ゆっくりしようぜ」

「───バスケ」
一言で言われて仙道は流川を見る。
「一人の練習はただのルーティンだ」

「……解ったよ…午前中だけな?」

流川はそれでも嬉しそうに頷いた。

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