仙流復活祭 December Love(ラスト) 重そうな瞼を無理矢理上げた流川は、まだボーッとしている。 そのうちに視界がクリアになった様で、仙道は微笑んだ。 「おはようv 顔洗って飯食え」 「……おはよ……」 流川も時計を見て目を見開く。 理解すれば彼の行動は速い。 それでもかっ込む程の時間でもないので、食事だけはちゃんとする。 それから挨拶を交わす程度で別れて、流川は学校へと向かった。 玄関先で彼の姿が見えなくなるまで見送ってから部屋に入り、後片付けをする。 そうして仙道は、今月後半に来るクリスマスをどうしようかと考えた。 クリスマスに男二人だけで過ごす───自分は恋人なのだから望むところだが、家族に変に思われるのは避けられまい。 来年こそは二人っきりで過ごせる筈だが、今年はどうしたものか。 流川が二人の初クリスマスを期待してくれている…なんて、逆立ちしても考えられない。 今年は家族と過ごさせてやるべきかなと、仙道は溜め息をついた。 クリスマスとは本来、キリストの誕生祝いな訳で。 キリスト教と言えば、(政治が介入した結果とは言え)同性愛を禁じている様な宗教だ、自分達が浮かれるのもどうかと思う。 しかし日本では元々の意味など逸脱した、企業によって作られたイベントだ。 日本中がそんな雰囲気では、流川に淋しい思いをさせたくはない。 二人の事だから、過ごし方は後で流川と話してみるとしても、十中八九、彼自身はバスケにしか興味がないだろう。 仕方ない、流川の両親への感謝も込めて、今年は彼にプレゼントを渡す程度にとどめようと仙道は思った。 「……まぁ、春から一緒に暮らせる訳だしな」 それも彼の両親のお陰なのだし。 新年早々流川の誕生日が来るので、仙道にとってはクリスマスなんかより断然そっちの方が大事だ。 いつか───ちゃんと独立出来て、流川と将来を誓い合う事があったとすれば──── そんな事を思って、仙道はニヘラッと笑った。 (12月の出費が多い家庭になるよなぁ……) 緩んだ顔で想像をして、仙道はハッと我に返った。 流川はアメリカに行くのだ。 そんな(結婚する様な)日が来るのは果たしていつの事か。 それでも自分は彼と別れるつもりはない。 しかし遠距離が人の心にどう作用するのか、こればかりは経験してみないと解らないのだ。 同棲にしたって、浮かれてしまっているけれど、してみたら合わなかったなんてカップルはごまんと居る。 (……それでも、さ。オレ達は大丈夫だって……信じてて良いか?流川───) 小まめにメールを寄越す様な男ではないので、無事に湘北に着いたかなぁなんて思いながら、彼の事を想う仙道だった。 一方流川は、この日改めて思ったと言う。 (やっぱ、学校はちけーのが一番だ!) やはり通学の優先順位は、流川にとってはそこなのだった。 ───────THE END [*前へ] [戻る] |