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平志小話集
A Happy Way
色んな人生があるけど、殺人事件の死体なんて、一生のうち一度も見ない人も多いと思うの。
なのに、この人達と居ると、何でこう出くわすのかしらね…


隣人の探偵も一緒にして心の中でそう呟くと、志保はスマホを取り出し、跪いて死体のチェックをしている恋人を見ながら警察に通報した。
やがて彼等の居た公園にお馴染みの刑事達と鑑識がやってきて、死体の周りをキープアウトされた。
第一発見者として事情を訊かれるので、暫くは一緒に居なければならない。

刑事達に説明を終えた後、表情は真剣だが目をキラキラさせて挑んでいる平次を見ながら、志保は笑みを浮かべた。
すると不意に喉の渇きを覚えて、これからカフェに行く筈だった事を思い出した。

取り敢えず自販機を探そうと、志保は辺りを見回した。
ちょっと距離があるが、それらしき物を発見して、そっとその場を離れる。


ガコンと音がして一本目を取り出し、平次の分を買う前にペットボトルの蓋を開けて少し飲んだ。
それからもう一本を買おうとした時、志保の動きがピタッと止まった。

少し先にテントが張ってあって、そこで動いた人影に志保の視線が釘付けになる。

(────お姉ちゃん?!)

そんなハズはない、と頭では思うのに、志保の躰はそちらに走り出していた。

その女性は、目の前に来た志保ににっこりと笑った。
「どうぞ?」

椅子を示されて、志保は初めて周りを確認した。
期間限定だろうか、テントでブースが作られていて、何人かの占い師がそれぞれ営業している様だ。

「私…占いは別に……」
興味はないのだが、姉にそっくりのその占い師が気になるので、ともかく座った。

「何か気になったからいらしたんでしょう?折角のご縁ですから、参考までにどうぞ」
顔が似ているから、当然声も似ている。

占いの種類はタロットで、彼女はそれをシャッフルし始める。
「特に訊いてみたい事とかないですか?」
「別に何も……」
「そうですか」

志保はただ、姉に似ている占い師を見つめた。
仕草や言葉のイントネーションがやはり姉とは違う。
占い師は数枚を志保自身に引かせてから所定の位置にカードを配り、ゆっくりと開いていった。


「貴女には二人の男性が見えるわ」

志保の視線がテーブルに移ると、彼女は続けた。

「先に現れた男性に、貴女は惹かれたかしら……彼とは出逢うべくして逢っているわ───そう、次の出逢いの為に」

そしてまた占い師に視線を戻せば、彼女は微笑みを浮かべた。

「今恋人が居るのね?その人に太陽のカードが出ている。とても暖かい、光の様な人かしら?」
「……ええ」

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あきゅろす。
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