平志小話集
ホワイトデート(2)
自然に手を繋がれて、志保は頬を染めた。
けれど解く事はせず、彼女も彼の手を握る。
一瞬、バカップルに見えないかなんて疑念が志保の頭を過ったが、都会で他人の事をそんなに気にされる訳もないので、彼女も自分の心に従う事にした。
カフェで少し遅めのランチにして、水族館へと足を運んだ。
海中生物や、目玉らしいペンギンパレードを見ながら平次が言った。
「ペンギンて、夫婦揃って一緒に色々乗り越えてく動物なんやて」
「そう…」
志保は多くを語らなかったが、ヨチヨチ可愛いペンギン達に気持ちが癒される。
それから話題のプラネタリウムに行き、“新感覚”と言うだけあって、中々新鮮に楽しめた。
そうして、夜景スポットには困らない土地でもあるし、そんな場所で夕食を摂る。
そんなデートコースもホワイトデーの一つだが、最後にホテルにチェックインして部屋に入ってから、平次は小さな包みを出した。
巾着型に絞られた袋に可愛いリボンが付けられている簡単包装で、それを開けてみると2種類の飴が入っていた。
「…これ、手作り?」
驚いたみたいに訊くと、平次は照れ臭そうに答えた。
「手作りチョコ貰たし、オレも挑戦してみたんやけど…クッキーは無理そうやったからアメちゃんにしてん」
確かに楕円形に固めただけのシンプルな形だ。
「一応女向け意識して、せめてもハーブ使うてみてんけど……えーと、ローズとラベンダー?////」
付加した洒落っ気に照れ臭いのか、色黒の肌の頬が少し紅く染まっている。
取り敢えず志保は薄いピンクの方の飴を口に入れると、甘い薔薇の香りが口に広がった。
香りがキツ過ぎる事もなく、上品な甘さに抑えられている。
「……美味しいわ」
それで平次はやっとホッとしたみたいな笑みを浮かべた。
飴は作り方が比較的簡単とは言え、初めての事でドキドキだったのだ。
すると今度は志保がバックの中からラッピングされた箱を出した。
「じゃあ私からはこれ…」
10cm四方で、高さは1cm位だろうか、礼を言って開けてみると、平次は思わず固まってしまった。
手作りクッキーだと思われるが、その形に悩む。
「………何で工藤なん?まだおまえを形どってる方が理解るんやけど」
菓子故かなりデフォルメされているが、それでもそれは工藤新一を形どった物だと解る。
すると志保は平次の顔をそっと見上げた。
「───私を、『食べたい』?」
見上げ角度で意味深な言い方をされて、一瞬平次は鼻血を噴くかと思った。
「志保っ……////」
そして彼女はやはり意味深に笑みを浮かべる。
「謎を解くのはお得意でしょ?西の名探偵さん?」
平次が目を見開くと、志保はにっこり笑って続けた。
「その答えが私からのプレゼント…よ」
そう言われてしまえば、平次は俄然意気込んで推理を働かせるのが当然だ。
彼はベッドに腰を降ろして件のクッキーを見つめた。
手に取って裏返して見るが、クッキー自体に仕掛けはなさそうだ。
考え込む平次に微笑むと、志保はシャワーを浴びる為にバスルームに入った。
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