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平志小話集
課外授業
ここは日本屈指の名門校であり、人それぞれの思いで集っている場所である。
その校舎内で、窓の外に何かを見つけた男子学生達がざわめいた。

「おいちょっ……見てみろよ、アレ」
「あー?───うわ、凄ぇ美人」
「だろ?しかもあのナイスバディ…ダメ元で誘う価値アリだって!」

元々肩書きには引け目のない男達である。
ダメ元と思えば躊躇する事もない。
その男達のうち二人が校舎から走り出て、その美女に向かって走っていった。


「あのっ!」
「…はい?」
近くで見ても、ふるいつきたくなる美女だ。
「良かったら校舎内案内しましょうか?外来の方ですよね?」
こんな美女が学内に居たら、噂にならない訳がない。

するとその美女は涼しげな目元で淡々と言った。
「大丈夫よ、知り合いが居るから」
にっこりと社交辞令の笑みを見せる彼女であったが、それは男達には逆効果である。

「だったら……」
言い掛けた処で別の人物が割って入った。

「志保、終わったんか?」
「ええ」
現れた人物に端的に返事をしたが、その笑みは先程とは違い、嬉しそうなものだ。

「服部ー?!おまえ何でっ」
平次は男達に目を向けると、あっさりと答えた。
「何でて……オレの彼女やもん」

「何だとー?!」
思わず大声になってしまう男達にそれ以上の関心を向けず、平次は志保の手を繋いだ。

「ほんならな」
笑みを残して去っていく平次を唖然として見送った男達は、軽く地団駄を踏んだ。

「ちくしょー……女に不自由ない奴はイイ女ゲットしやがるぜ」
「今度ぜってー奢らせようぜ!」
「おぅ、どんな具合か聞き出してやる〜〜(泣)」

聞きようによっては下品と言えなくはない会話であるが、例えレベルがどんな場所であれ、男の本質など大差ない。
その辺りに居た女子学生達も、二人を見て振り返った。

「見て見て!服部君!」
「えー、あの人彼女?」
「嘘ぉ…ショックぅ……」

嫉妬と羨望の視線を感じて、志保は溜め息をついた。
学内でわざわざ手を繋いだ意味を察して苦笑する。

「モテモテみたいね、貴方」
「アホか…んな事よりおまえの方が男達に狙われるんが心配やっちゅーねん」
ぎゅっと手を握られて、志保は頬を染めた。

「……で?田渕の方は、食事に誘われたりせぇへんかったん?」
「されてないわよ」
その言葉に平次はホッと息をついた。
どうやらビジネスライクで済んだ様である。

「特別講師で講義しないかとは言われたけど、断ったわ」



さて、何故こんな事になっているかと言うと、相変わらず事件に巻き込まれる体質の平次とたまたまその時一緒に居て、事件に付き合う羽目になり、この大学の講師の一人である田渕と知り合ったのだ。

彼女は何と言ってもアメリカでハイスクールをスキップしている才女である。
肩書きは科学者だが、異例の若さで医師免許を持つ帰国子女だ。
平次と変わらない年に見えるが、実は彼より年上なのである。

「ひょっとしたらオレのセンセーになったかも知れへんねんな」
平次が笑うと、志保はムッとして言った。
「冗談じゃないわよ、そんな余裕ないわ」

「…ま、オレも志保を狙う男増やしたないしな、オレだけ見とってな?」
「バカね」
呆れた様に応える志保に笑みを浮かべた平次は言った。

「買い物付き合うてくれるか?そしたら飯食いに行こか」

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