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平志小話集
可愛いカラダ(2)
「電車乗られへんやろ…車で送ったるわ」

あまり胸を目立たせない服を着てきた為に乳首が浮き出ていたりはしないけれど、その揺れ具合は痴漢を引き寄せる可能性がある。
電車内で平次が庇うにせよ、そんな志保を大多数の男達に見られるのは喜ばしい事ではない。

そんな訳で、しっかり手を繋いで工藤邸に向かい、車を借りて志保を助手席に乗せたのだった。

まずは既製品の方のショップに向かい、平次は近くの駐車場に車を停めて、入り口から出てくる志保が見える位置で待った。

一時間近くになる頃に、彼女は袋を持って出てきた。
そして、ちゃんと身に着けているらしい事が見て取れた。

迎えに来た平次に志保が言った。
「お待たせ。オーダーにまでしなくても大丈夫だったわ」
「そぉか…他に何か用事ないん?」
「今日はないわ」

平次は持っていたコーヒーの空き缶を専用のゴミ箱に捨て、また彼女の手を取って車に戻った。

「ほな、ドライブがてら飯食いに行こうや」

そうして湾岸線を走り、郊外のロケーションの良いレストランに車を停めた。


食事をしながら志保がそっと切り出した。
「貴方の事だから、一緒に入るかと思ったんだけど」
「───入って欲しかったん?」

「そういう訳じゃないけど…好奇心旺盛な探偵さんだから?」
そんな事を言われて平次は苦笑した。

「そら好奇心は大アリやけどな、そないなトコでおまえが選んでんの見とったら、欲情してまうやろ」
志保は頬を染めた。
「そういう理由?」
「そやで」

そうして暫く黙々と食事をしてから、志保は上目遣いで平次を窺った。
場所に困る彼ではなさそうだが…
と言って何処ででもサカられては確かに困る。


食事を終え車に戻った時、ふと志保は言った。
「車で襲われる心配はないみたいね?」

ドライブ中それらしいロケーションはあった。
けれど平次はその種のオイタをしようとはしなかったのだ。

「…これは工藤の車やからな」
別に、したくない訳ではないらしい。
「工藤君限定?」

「他人のもんを好き放題せぇへんけど、工藤のんは特別や」

平次は義を知るサムライだ。
大の親友たる工藤新一に対して、義を欠く様な真似は絶対にしない。
そして工藤を語る彼は、何だかカッコ良いのだ。

志保は苦笑した。
自分は男を生かす女でなければいけないのだろう。
彼が親友と共に危険に飛び込んでいくのを止めてはいけない。

「───貴方は…前田慶次や直江兼続みたいね……それとも弁慶かしら…」
「ん?そぉか?」
自分の事には少し鈍い東西の名探偵達。
そこで平次が別の話に切り換えた。

「ケーキ屋寄ってくな?工藤の好きなレモンパイ、礼に買うてくわ」

そうしてそこで志保の為にもスイーツを選び、別にした。


ガソリンを補充してから工藤邸に車を返すと、一緒に食べていけばと言う新一に「ねーちゃんと食いやv」とウィンクをして、頬を染める彼に笑い掛けると、志保を隣に送った。


「上がっていくでしょ?」
頷くと、彼女はリビングではなく自分の部屋に平次を通した。
「お茶淹れるわね」

工藤邸で暫くティータイムになるかと思っていたので、二人だけの時間を選んでくれた事が嬉しかった。
小さな丸テーブルにお茶とケーキを乗せて、ベッドに腰掛ける。

聡明な志保は、「私と工藤君、どっちが大事なの?」なんてバカな事は言わない。
そうしてこの小さなお茶の時間を楽しんだ。

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あきゅろす。
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