平志小話集 可愛いカラダ 大分陽気も暖かく、汗ばむ季節になってきた。 然りとてクーラーを入れるには少しだけ早いので、窓を開け放している。 寝着のままでベッドで本を読んでいた志保は、それを閉じて起き上がると、タオルと着替えを持ってバスルームに向かった。 シャワーを浴びてスッキリすると、躰を拭いて下着を着ける……と、志保は違和感を覚えた。 取り敢えず着けてみてから状況を見たら、少しだけ乳房がたわんでいるのだ。 「やだ…太ったのかしら?」 体重計に乗ってみると、微量程度増えている。 特に気にする様な重さではないけれど。 仕方なしに志保はあまり胸の目立たない服を着て、米花町の百貨店に足を運んだ。 ランジェリー売り場でブラジャーのフィッティングをして貰う。 「こちらのサイズがよろしいですね」 綺麗に乳房を覆う形良く整えられたカップを鏡で見て、志保は店員に訊いた。 「あの…ウェストとヒップのサイズもいいかしら?」 「ええ、いいですよ」 笑顔で応じた店員に計って貰うと、その辺はサイズが変わっていないのだ。 そうして試着のブラを外してサイズを見ると、アンダーバストは変わらず、トップバストだけが変わっていた。 「…って事は、胸だけ大きくなったのね…;」 「あら、いい事じゃないですか」 笑う店員に志保は溜め息をついた。 という事は、ブラジャーを全て買い替えなければならないのだ。 それに合わせてパンティーも買う事になる。 「このサイズ、他のデザインはあるかしら?」 店員が持ってきてくれる間、志保は鏡に映る自分の姿を見た。 巨乳と言われてしまうサイズではあるけれど、躰全体のバランスが悪くなる程ではない。 何より、張りのある形を保っているので、寧ろ男共の視線を釘付けにする様な美しいエロボディである。 そこへ店員が戻ってきて、3着位手にしていた。 「このサイズになりますと、当店ではこれだけになりますね」 ワンサイズアップしただけで形にあまり贅沢は言えなくなる様だ。 売れ筋のサイズではないのだろう。 安い買い物ではないので、志保はそれらを丁寧に断って、店を出た。 取り敢えず近くのカフェに入って、志保は携帯でサイトをチェックした。 そうしてAV女優ご用達という大きなサイズが豊富に揃っているという店と、オーダーメイド取り扱いという店を見つけて、それを保存する。 そんな処へコンコンと窓を叩く音が聞こえて顔を上げると、色黒の馴染みのあるイケメンがにっこりと笑った。 入っていいかの合図に志保は立ち上がって首を振り、自分の方が会計をして店を出た。 そしてその男…服部平次に志保は言った。 「これから買い物しなきゃいけないの。貴方は…付き合えるかしら?」 「? 何処やねん」 「新宿と池袋だけど…結構待ってて貰うかも」 「ええよ、折角逢えたんやし、付き合うたるわ」 美しい志保には、1人歩きよりはボディガードが居た方がいい。 志保としては1人の方が恥ずかしくはないのだが、平次は彼氏でもあるのだし、一緒で不都合な訳ではないのだから。 駅に向かう間、平次はふと目に映った彼女の胸の揺れ方に気付いて、慌てて彼女を人気のない路地に連れ込んだ。 「ちょお待ちや、何で…ノーブラやねん」 気付かれてしまったか、と志保は頬を染めた。 「だから急ぎなのよ」 数瞬志保を見つめた平次は、即決して携帯を取り出した。 「───あ、オレや。ちょお頼みがあんねんけど、今車空いてるか?」 ちょっと驚いて見上げた志保は、そのまま様子を見た。 「ほんなら今日1日貸してくれへん?───あぁ、解った、恩に着るわ」 そうして通話を切り、平次は志保の手を握って歩き始めた。 「どうするの?」 [次へ#] [戻る] |