パラレル物 サクラ咲く道へ 偶然の導きがあったとは言え、子供の頃の秘密基地で初めてアイツとキスをして…それから……シた。 抱かれる事の抵抗感よりも、やっとアイツが手に入るのが嬉しくて堪らなかった。 ずっと離れたくなかったけど、現実にはそうもいかないし、自分の部屋に戻ってから躰はちょっと痛んだけど、バカみたいにニヤニヤしてしまって、戻すのに苦労した。 季節は巡って、オレ達はたまに秘密で抱き合う様になったけど、表面上は何もない、只の先生と生徒。 本当は卒業まで待つ予定だったから、たまにでも恋人らしい事をしているだけでもマシと言えばマシだ。 受験時期でアイツは忙しくて、この頃またご無沙汰だけど。 何せオレはまだヤリたい盛りのピチピチの高校生男子だ。 アイツを想いながらヌク事も……まぁ……よくある。 寧ろ健気に浮気もしない事を褒めてくれ。 そんな事はともかく、オレは勿論、前期日程で合格を決めた。 別に引っ越す訳でもないから、暫くは悠々自適ってヤツだ。 アイツは滅茶苦茶忙しいけどな。 そんなこんなで、クラスの大方が進路が決まった冬頃、ホームルームの時にアイツが言った。 「───ちゅーこって、オレもおまえ等と一緒に今年でこの学校卒業するわ」 「ええーっ?!」 クラス内にどよめきが起こった。 「今期一杯居るから、正確にはちょおズレるけどな」 ザワザワとはしたが、自分達も卒業の身、在校生よりはショックは薄い───皆はな。 オレはと言えば、いつも通りの笑顔の『先生』をじっと睨んだ。 だってオレはそんな事一言も聞いてねぇ! オレは仮にも恋人なんじゃねーのかよ!! 納得のいかないオレは、その日アイツが帰るのを待った。 「工藤?!まだ居ったんか」 校門で驚くアイツに、オレは不機嫌に応える。 「たりめーだろ?オレは初耳だっての!」 服部はオレをちょっと見つめて何を指しているのかを察して、苦笑する。 「せやかて…しゃーないやん?おまえはまだオレの生徒やし、公私混同出来ひんやん」 さり気に校門から連れ出されてそう言われた。 「教師辞めんのか?それってまさか…」 「教師辞めるんちゃうで、公務員辞めんねん」 そう答えてから服部は、オレの応えを待たずに続けた。 「制服やしなー…取り敢えず家まで送るわ」 『話はそれから』と暗に示したのを汲み取って、黙って一緒に歩く。 まだ陽が短いから、辺りはもう暗くなっている。 家に近付くと、さり気なく服部が周りに気を配ったのが判った。 幸い周りに人影はない。 「入ってええ?」 オレはコクンと頷いて、服部を家の中に上げた。 一応客だから、珈琲位淹れてやる。 リビングで互いにソファーに座った。 「おまえ飯は?」 「後で買いに行くし、それより話」 本当は食いながらでも良いんだろうけど、そんな気持ちの余裕がない。 服部の顔をじっと見れば、奴はすんなりと答えた。 「塾講師になろか思て」 「何で……」 「おまえが卒業したかて、高校教師やっとったらあんまし状況変わらへんやん?女ちゃうんやし。せやからこれが教師とおまえを両立するんに一番ええかなって」 [次へ#] [戻る] |