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パラレル物
Warmth(4)
「やぁ平次、工藤君は助かったよ。血がすっかり固まってカピカピじゃないか…躰洗って食事しようよ?」

すると高木の言葉が解ったのか、平次は立ち上がった。
乾いて黒ずんでいるから一見血だとは見えなくなっているが、半身血まみれで毛がゴワゴワになっている。
高木について車に乗ると、彼は平次の頭を撫でた。

「工藤君を…救ってくれてありがとう…」
そう言った高木は平次と共に警察犬訓練所でシャワーと餌を貰ってくれた。

その後、新一と話をして平次を工藤邸まで送ってやり、高木はホッと胸を撫で下ろしたのだった。



平次はそれから毎日病院に通った。
新一が歩けないうちは窓越しにサインを送り合い、歩ける様になってからは新一が外に出てきてくれた。

新一は外のベンチに座って平次と話した。
「平次…ありがとうな…おまえのお陰で助かった。あの時、気付いても急所外すのがやっとだったんだ」
すると平次は首を左右に振った。

「…色々話したいんだろうな……それはもう少し待ってくれな」
そう言って新一が頬を染めるのが何に由来しているかなんて、勿論周りの人間には解らない。

そうしていると、少女が近付いてきた。
「そのワンちゃん、お兄ちゃんのだったんだね」
「えっと、君は?」

小学1〜2年生位の、ツインテールにした可愛らしい女の子だ。
「あっちの部屋でこのワンちゃんがずっと見てるの見たの」
小児病棟の病室を指差しながら答えると、その子はにこっと笑った。

「良かったね、お兄ちゃんにちゃんと会えて」
そう言って平次の背中を撫でてみる。
「このワンちゃんおとなしい…おりこうなのね」

「ありがとう、心配してくれたんだね。平次って言うんだ、この犬」
「へいじ?かわいいねーv」

客観的に見れば、平次は可愛いと言うより凛々しい感じだが、女の子にすれば犬は可愛いものなのだろう。

そんな所へ母親だろう女性が迎えに来て、少女は笑顔でバイバイと手を振っていった。

「……おまえ、女の子にモテモテだな」
新一がぼそりと言うと、平次は彼の頬をペロリと舐めた。

人型だったら「妬かんでもーv」なんてヌカしただろうか、新一はあの笑顔が見たいと思ったけれど、口には出さなかった。



それから順調に回復した新一は、後日、やっと退院となって家に戻った。
連絡の取れなくなった彼を心配した幼馴染みに怒られたけれど、それはそれで嬉しい事だ。

「ごめんって…親ぐらいにしか連絡出来なかったんだって;」
「もー……じゃおじさんとおばさんは?」
「大丈夫だから来なくて良いって連絡したよ。〆切前だったらしくてさ、捕まるのも遅れたらしいし。余裕が出来たら突然やってくるかも知れねーけどな」

「そっかー、もう大丈夫なのね?」
じっと見上げて確認してくる蘭に、新一は頷く。

「おー、もう大分イイ。まだ無茶は出来ねーけどな」
「もー、気を付けてよー?」
「解ってるって。平次も放っとけねーしな」

するとはっとして蘭は言った。
「そうよ!私じゃ食べてくれないんだからね?」

別にその気ならコイツは自分で食える、とは言えないけれど。
そして新一は気付いて言った。

「……あ、コイツ、別におまえを嫌ってる訳じゃねーからな?」
「そう?」

見れば、新一にピッタリと寄り添っている平次は尻尾を振っている。

「コイツ独占欲強いだけだから。蘭がイイ奴だってのはちゃんと解ってるよ」
「そーなの?だったら嬉しいな」

にこっと笑った蘭は、それから父親に食事の支度をしてやらなきゃと帰っていった。

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あきゅろす。
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