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パラレル物
碧の時刻
「工藤ーっ、合コン参加しねー?」

講義が終わって、大学を出ようとした矢先に、同級の顔見知りに声を掛けられた。

「あー…パス」
「何だよ、合コン嫌いか?結構可愛い娘揃いだぜ。……あ、彼女居るのか」
「……まぁな」

ここは肯定しておいた方が、面倒がなくて良い。
「まー、おまえだったら、居ねー方が不思議か。おまえみてぇに顔が売れてりゃ、バレちまうもんな、彼女に」
勝手に納得する学友に、新一はひらひらと手を振って、大学を出た。


「ふぅ……」
新一は溜め息をついた。
何だか何をしても楽しくない。

高校時代、一人のクラスメイトを好きになった。
けれどその恋は諦めるしかなく、卒業と同時に遠く離れて、会う事もなくなってしまった。


そんな或る日、新一は新宿のバーの扉を開けた。
たまに気が向くと来る、静かなショットバーだった。
その日はカウンターにもう一人、男が静かに呑んでいた。

中年の、口髭を生やした侍系の男。
新一は1つ席を空けた隣に座った。

マスターに好みの酒を頼む。
それを少し飲んで、グラスをコトリと置いた。
すると中年の男がマスターに言った。

「辛口の酒、適当に作ってくれへんか」
それを受けてマスターが作り始めると、新一は思わず声を掛けた。

「関西の人なんですか?オレ、高校の時、大阪だったんですよ」
「…あぁ、ワシも大阪や」

ここは酒の席だ。
居合わせたのも何かの縁という事で、二人はポツリポツリと話し始めた。


「へぇ…奥さん居るんだ……でもこの辺…」
「…そうらしいな…静かな店言うたら、ココ紹介されてん」
そう答えて、男は更に言った。
「実はな、息子に最近、どないにも好きな男が居てて忘れられへんゆわれてな。ワシにはどないゆーても解ってやれへんくて、頭抱えてんねん」

成程、それでか。
「だからそういう人間の来る店に?」
男は小さく同意を示すと、改めて訊いた。
「アンタも男が好きなんか?」

「ゲイかと訊かれたら、正直まだよく解んねー。ただ、惚れた相手が男だった。だから、自分をちゃんと知りたかったんだ」
「……本人も悩むんやろな」
「そうだな…人にもよるけど」

初めて会った人間なのに、二人は随分しっとりと話し合った。
大分酒も入り、夜も深まった頃、新一が言った。

「……少し、試してみるってのは?」
「何て?」

「駄目なら駄目でいいしさ、出張中の遊び程度に思えば?」

新一自身もまさかの台詞だったが、侍系の面差しが、それも良いという気にさせた。

酔いも手伝ってか、新一からそこはかとなく、色気が漂っている。
綺麗な色白の肌が、僅かにピンク掛かって、性別を置いといても、それは綺麗な生き物だった。

中年の男の方も相当酔っていたのだろう。
悩みも手伝ってか、彼は席を立った。
「……それも何かの一興か」


その店の近くのラブホテルでシャワーを浴びて、バスローブを引っ掛けただけで、新一が出てきた。
「なぁ、名前、何て言うんだ?」
「平蔵や。古めかしい名前やろ?」
「平……蔵…?」
何だか過去の想いが蘇る。
胸の痛みと共に、新一は彼に抱きついた。

平蔵は少し躊躇して、新一に訊いた。
「……男とした事ないねん。どないしたらええ?」
「───そんなに変わんねーよ、躰の造りが違うだけだ」

平蔵は新一をベッドに押し倒し、はだけたバスローブから見える胸を撫で回した。
目を閉じた新一の瞼が震えた。


何だろう、細身ではあるけれど、しっかりした男の躰なのに。
色白で、何処か艶のあるそれは、何故か嫌悪を感じない。

平蔵は新一の首筋に唇を寄せた。下から上へと辿っていって、耳を舐めた。
すると、新一の吐息が甘く漏れた。
「…ぁ……っ……」

「耳…ええんか?」
更に舐め回してやると、ゾクゾクっと感じた新一が身を跳ねさせた。
「ふあっ…あっ、や……」

新一の艶のある喘ぎ声が、平蔵の欲情に火を点けた。

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