お題小説
お題2.がたがた
買い物からの帰り道、志保はふと立ち止まった。
周りを見回すが、誰も居ない。
何だか気持ちが悪くて、志保は足早に家に戻った。
何だろう、最近妙な視線を感じるのだ。
けれどいつも、振り返っても誰も居ない。
そんな日々が志保を不快にさせていた。
夏の通り雨が降りだして、間一髪だったと思っていると、窓がガタガタと鳴った。
思わずドキンとしたが、志保は冷静に思い直した。
(風強いのかしら)
音のした方を見ると、もう収まっている。
窓の外は薄暗くて、ただ、雨が降っていた。
仮に足跡が残ったにしても、消してしまう程の強い雨が。
志保は何だか不安を感じた。
阿笠博士は学会で数日留守なのだ。
こんな漠然とした、根拠のない不安の為に平次を呼び付けるのは戸惑われたし、況してや隣の名探偵に相談する様な大事ではないと思うし。
というか、彼氏が立派に名探偵なのだ。
そんな二人を思い浮かべて、少し安心した。
いざとなれば、隣に駆け込めば良い。
それ以前に、平次は恋人なのだから、意味もなく呼んだとしても構わないものだが。
そこはギリギリまで甘えられない志保の性格なのだ。
そんな一夜が明けて、志保はシャワーを浴びようと、キャミソールにバスローブを羽織っただけの姿でバスルームに向かった。
突然現れた人影に、はっとした瞬間、後ろから男のゴツい手で口を塞がれた。
もがく志保をものともせず、男は彼女を乱暴に床に倒した。
背中を打って、痛みを覚えた志保の手首を一掴みにして乗り掛かる男の顔を見ると、大学生風の、だが眼鏡の奥の瞳がイッてしまっている。
志保は恐怖で震えた。
幾ら暴れても、女の力では、男の腕力にビクともしない。
計画犯らしく、志保の両手に手錠を掛けて、男はニヤリと笑った。
「厭っ…はぐっ……」
口から手が離れた瞬間に叫ぼうとしたけれど、すぐに縄に布を巻き付けた様な猿轡を噛まされてしまった。
乱れたバスローブを更にはだけ、薄く乳房が透けて見えるキャミソールを、男は力で引き千切った。
志保は激しく首を振って嫌がるが、その男は舌舐め刷りをして、曝された形の良い乳房を荒々しく揉んだ。
「んんんんっ…!んっ!んっ!!」
叫びたくても叫べない。
志保は思わず心の中で、恋人の……平次の名を呼んだ。
すると男は薄いパンティーの上から陰部を指で擦り始め、志保はせめてもと男を睨んだ。
それから徐に、不思議そうに男が言った。
「感じないのか?」
瞬間、志保の頭が急に冷えてしまった。
────この男、バカ?
多分、AVや漫画の知識位しかないのだろう。
こんなしょーもない男に力づくで犯される屈辱に、志保は猿轡を噛み締めた。
男の手がパンティーの中に忍び込み、乱暴に陰核を擦った。
(痛いっ…!厭ぁ…!厭…っ!!)
敏感な部分をいきなり乱暴に扱われても、痛みしか感じない。
そんな精神的に未熟な男が、指で陰唇を割り広げ、荒々しく摩ってきても、濡れたりする訳がない。
志保は痛みで躰を捩った。
一向に濡れないソコに、男は業をにやした。
「この女、イイのは顔だけか?」
失礼にも程がある暴言を吐かれ、志保は怒りに駆られた。
力一杯暴れようとする志保を、殴って大人しくさせようと、男が手を振り上げたその時、その男が引き剥がされ、壁に打ち付けられた。
眼鏡が吹っ飛んで割れると同時に、平次がその男の鳩尾に蹴りを入れた。
「工藤の蹴りなら、骨折れてんで…感謝するんやな」
冷たく言い放って、気を失った男の身体検査をして小さな鍵を見つけると、志保を抱き起こして猿轡と手錠を外した。
「大丈夫か?」
バスローブで躰を隠して、志保は頷いた。
「コイツ警察に突き出すから、着替えとき。窓壊されてたで?博士に防犯強化しとく様、言うとくわ」
パトカーが着いたのを見て、隣の新一も駆け込んできた。
「何があったんだ?」
「住居不法侵入や」
見ると、男が警官に引きずられてくる処だった。
犯人は気を失っており、証拠品の入ったビニール袋を見て、新一は何があったかを察した。
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