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平新メインストーリー
消えない刻印(2)
「聡っ!」
「母さん!」

互いに走り寄り、母親が子供をぎゅうっと抱きしめた。
「ごめんね、行けなくて……来年からは絶対都合つけるからね」
「うん、でも楽しかったよ、今日」

そうして母親は平次達に目を向けて、お礼を言った。
その後、彼女から謝礼の入った封筒を受け取って、二人は家へと帰ってきた。

「平次兄ちゃん、新一兄ちゃん、バイバイ!」
と笑顔で手を振ってくれた聡に安堵しながらも、珍しい依頼内容を、無事に終わらせたのだった。



新一はソファーに腰を下ろして本を読んでいる。
平次はテーブルに珈琲を置いてやり、新一に声を掛けると彼は本から目を離さないまま「おぅ」と応えた。
視線はあくまで文字を追っていて、平次は新一の対面に座り、珈琲を飲みながら、一人で喋る訳もないので彼を眺めた。

そんな時間が数分過ぎていたのだが、新一が見ている本に影が写り、それに顔を上げると平次の顔が思った以上の至近距離にあって、思わず後ずさった……と言ってもソファーの背により殆ど移動はしてなかったのだが。

「何だよ?!」

いつもなら平次は読書の邪魔をする事はない。
怪訝そうに訊く新一に、彼は一つ息を吐いた。

「何や考え込んでるやん……バレとるから吐いてまい」
「は?オレは本読んでんだろーが」

するとすかさず平次は告げた。
「集中してへんやん、オレの『工藤新一探知機』甘ァ見たらアカンで」
「はぁ?何言ってんだ、おまえ」

確かに、服部平次に限り、新一の理解度は群を抜いている。
だがしかし、別個の人間である事には変わりはないのだ。

「思い悩んでるより言うてもーた方が解決に繋がんで?何の為にオレが居んねん」
「別にっ……」

自分だって解決出来る、と言おうとして、平次の真剣な顔を見てしまって黙った。

「オレかて神さんちゃうねんで?理解度が高いっちゅーだけで、おまえの何から何まで言われなくても解るっちゅー訳にはいかへんのや」

新一はそんな平次を見つめて、はあっと息を吐いた。


「…………解ったよ……」


すると平次は新一の隣に座り直し、新一は目を追うだけで頭には入っていなかった本をテーブルに置いた。

新一はまず珈琲で喉を潤してから、徐に話し始めた。


「───おまえさ、自分の子供にもあんな風に子煩悩なんだろうなって思ったらさ、本来だったらおまえってイイ親父になるんだろうに、オレとじゃ無理じゃねーか」

驚いた表情を浮かべる平次に、新一は頬を染めて続けた。
「聡……さ、宮野の事、おまえの彼女かって迷わず訊いただろ?他人からはそう見えるんだなって思ったらさ、オレでホントにおまえの為に良いんだろうかなんて考えちまって」

すると平次がそこで言った。
「ちょお待ち、問題はそこで2コあるから、1コずつ言うな?まず一つ、おまえオレん事勘違いしてんで?子煩悩て、どっから出てくんねん」

「だって……宮野と居たら、若夫婦みたいでイイお父さんしてるって感じだったじゃねーか」
「そら聡の為の『仕事』やんか」
「でも、それで気付いた事には変わりねー」

ブスッと答える新一に、一旦彼を見つめた平次は改めて言った。

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あきゅろす。
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