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鳳凰戦華伝







遥か後方で、火の手が上がった。



轟音と共に現れたそれを、しっかりと二人は瞳に捉えていた。




「あれは……朴玻村じゃねぇか?」


怪訝な声は颯雲のもの。

強い海風によって、煙は流れていった。


椿は、太刀を収めることもせず、そのまま馬に飛び乗った。

太刀を持たない左手で手綱を引く。

「……おい、あのでかいの乗せられるか?」


唇を噛み締める颯雲を見て、椿は馬に話しかけた。

やはりこの馬は人語を理解しているのではなかろうか。
当然だとでも言わんばかりに、馬は鼻息を吐いた。


椿は驚いたように目を見張り、それから笑った。

「……おい!颯雲!」

怒鳴られた颯雲は、椿をふいと見た。

口元に笑いを浮かべた椿は、顎で自分の後ろを指す。

それに気づいた颯雲も椿と同様に、馬の背に飛び乗った。


「こんな細っせぇのに俺、乗せられるのか?」

「こいつが大丈夫だって言ってんだから大丈夫だろう」





言うと椿は、再び手綱を引き、勢いよく細道を駆けた。







向かう場所は、朴玻村。















そして世界は、一人の女により激動と化す。




民が、立ち上がる時。



女は世界を識る。





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