セイントブレイド
9
声がした方へ行ってみると、そこには黒一色の鎧を纏った長身の騎士がいた。
暑苦しさを象徴したような顔立ちで、オレンジ色の短髪がその暑苦しさを強調しているようにも見える。
「はっはぁー! これでも食らうがいい!」
男は絶え間なく槍を振り回し、「これでもか」「そこか」とよくわからないことを叫んでいる。
彼は何に対して槍を振るっているのだろうか。
僕は気になって思わず聞いてしまった。
「なあ、あんた何と戦ってるんだ?」
すると男はピタリと動作を止め、僕の方を凝視しつつこう答えた。
「空気だ」
理解しようと頭を働かすも、こいつが何を言っているのか1ミリたりともわからない。
「は?」
「聞こえなかったか? 俺は空気と戦っているんだ。こいつ、回避率が異常に高くてな、攻撃が中々当たらなくて苦戦していたところよ」
「……」
そろそろ、まともな人と出会いたい。
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