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このさきは本気(佐助/現代)
こんなに早く起きたのは久しぶりだ。
意気揚々といつもより早く学校へ向かう。

昨日までは土砂降りの雨模様だったが、今日は素晴らしい快晴だ。
今日はいいことがありそうだ。


ガラ

佐助が教室の扉を開けるとすでに先約が。

「おっはよー、猿飛」

「あれ、名前ちゃん。いつも遅刻ギリギリなのに、今日は早いのね」

クラスメイトの彼女を軽くおちょくってみると、少しばかり、むっとした表情になる。
そんな表情もかわいい。

自然と口角が上がりそうなのを必死に抑え、名前の前の席に座り、後ろを向く。

「猿飛ー」

「はいはいっ」

「しりとりしようか」

先ほどから続けている数学の宿題からは目を離さずに、彼女が言う。

「なんで急に。名前ちゃん宿題中じゃないの」

「りす」

いつものように名前の少しぶっきらぼうであり、更には予想外な言葉がふりかかりあっけにとられている俺様。

「りぃす!!」

すでにしりとりは始まっているらしい。
呆れ半分、彼女の機嫌を損ねる前に素早くしりとりに気分を切り替える。
そんな気分ではないのだけれど、ここは従うのが得策だろう。

「スイカ」

「かりんとう」

「ぷっ」

「なによぅ」

「ううん。かわいいと思って」

いままで数式を見つめていた彼女の瞳に俺様が映る。
しかし、不満そうな顔である。

「うま」

再び彼女は視線を落とし、数式とにらめっこである。

「まくら」

「ライス」

「すき」


いままで天井を見上げていた顔を彼女に向ける。
いつもの強気な目線にぶつかる。

息が。
息が苦しくなる。



「すき」



とどめの一発。



20110829 このさきは本気

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