さそわれる(佐助/現代)
「さっちゃあ〜ん」
リビングでくつろいでいる佐助の背後から名前が覆い被さる。愛おしい彼女の香りが鼻をこそばす。
「名前ちゃん重いって〜」
言葉とは裏腹に目尻が下がる。
佐助とは対象的に名前の眉間にしわができる。
「なによ、どおせおもいですよー」
少しすねて名前はつぶやく。いくつか年上のくせにこの女の子はかわいらしい。自然と佐助から笑い声がこぼれる。
背後で文句を言いながら、名前は顔を佐助の髪にぐりぐりとうずめる。
その行動にほほ笑みながら佐助は先ほどから読んでいたファッション雑誌に目を落とす。
はむっ
佐助の真後ろから予想もしない音、もとい声が耳をかすめる。下に落としていた視線を佐助は声の発信源へと向ける。
「なんで俺様の髪の毛なんて食べてるのさ」
冷静な視線を向けた先には、何故か自分の自慢の髪の毛を口からのぞかせた名前がいる。彼女の不可解な行動はいつも通りである。
口の中に含めていた異物を出して名前は言う。
「だって佐助の髪の毛きれいな色だからおいしいかなって」
さも、自分は当然のことをしたまでだ、と言わんばかりの顔で名前は言葉を放つ。
その言葉に佐助は一瞬呆然としたがすぐに笑いがこみ上げ、自然と口元が上がる。
それに誘われ名前の口元も上がる。
名前の少し冷たい指が佐助の頬をなぞり、次に唇を同じ物で奪われる。
「やっぱり、こっちのほうがおいしいね」
20111127 さそわれる
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