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NRC女監督生の白昼夢
ふたりの廊下と恋心



「そろそろ行きましょうか」

そう言われて食堂を後にする。

『はい』

先輩の隣に並んで歩き出す。

歩調を合わせて歩いてくれているようで、とても歩きやすかった。

「なんだか新鮮ですね」

『何がですか?』

「こうして二人で歩くのが、ですよ」

学園の喧騒を遠くに感じながら廊下を歩くのは久々で。

『そうですね、先輩を独り占めできて嬉しいです』

冗談混じりに笑ってみせる。

「それは僕の台詞です。貴女のまわりにはいつも人がいる」

『そうですか?』

私の隣にはいつもグリムがいて、基本的にエースとデュースもいる。

『そうですね』

「そうですよ」

――穏やかな時間。
この時間がずっと続けばいい。

「これを安らぎというんでしょうか」

『え?』

「なんでもありません、独り言ですよ」

誤魔化すようにふわっと、ジェイド先輩の手が私の髪を梳いた。

『っ!?』

「どうしてそんなに驚くんです?」

異性の髪を触るなんて。

『フロイド先輩くらいしかこんなことしてこないので、びっくりしました』

それを聞いた先輩は少し不服そうだ。

「フロイドですか」

私の髪をそっと掴み、感触を確かめるように手を動かす。

『なんなんですか?』

心臓に悪いので触らないでほしい。

「気にしないでください」

気にするなという方が無理な話だ。

『……髪って意外と敏感なんですよ?』

「そうなんですか?」

わかってなさそうなので手を伸ばし、先輩の髪を手櫛する。

『どんな感じですか?』

「ぞわぞわしますね」

『わかったのならやめてください』

やめてと言っているのにまだ髪を触り続けている。

『新手の嫌がらせですか?』

「指通りが良くて気持ちいいなと思いまして」

楽しそうにしているものだから、抵抗する気もうせてしまった。

『もうお好きにどうぞ』

「では遠慮なく」

指に巻きつけてくるくるしたり、梳いたり撫でたり。
どれくらい触れられていただろうか。

『…………もういいですか?』

「はい、満足しました」

最後に頭を撫でられてやっと解放される。

私の気持ちをわかっていてこういうことをするのは、本当に腹が立つ。

『……』

私はジェイド先輩が好きだった。

どこがいいのかと聞かれると、いい性格をしているし困るのだけれど。
気付けば目で追っていて、その声を聞きたくなる。

『さっさと行きましょう、遅れます』

「ふふ、手でも繋ぎますか?」

意地悪く笑う顔も好きなのだから、どうしようもなく手遅れで。

『繋ぎません!』

こっちは意地を張るので精一杯だ。

『そういえば、フロイド先輩はどうしたんですか?』

いつもならこの辺で声をかけられるはずなのに。

「フロイドなら今頃お昼寝中だと思いますよ」

要はサボりという。

『アズール先輩は?』

「アズールは先に行くと言っていました」

飛行術が苦手なのを知っているので、苦い顔しかできなかった。

『練習してるんですかね』

「進歩があればいいんですが」

そういう先輩も飛行術は得意ではないと言っていなかっただろうか。

『ジェイド先輩も飛行術は苦手なんですよね?』

「アズールほどではないです」

スンッと真顔で返される。

『そんなに酷いんですか?』

「いい見世物になると思いますよ」

言い方がひどい。

「ユウさんは魔力がないので飛べませんよね、実施訓練の間は何を?」

『見学です。それかグリムと一緒に訓練しますよ』

「それは……やめておいた方がいいのではありませんか?」

あれをと指差す先には、めちゃくちゃに箒に振り回されているグリムがいた。

「ふな〜〜〜!!」

魔力の制御ができていない。

『……そうですね』

見なかったことにしよう。

「グリムくんは猫なので、2階くらいの高さなら落ちても平気でしょう」

『私は骨が折れそうです』

絶対に飛行術には参加しないでおこうと決意した。




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