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NRC女監督生の白昼夢
恋人はムシュー・計画犯



――翌日。

放課後、私はグリムを抱いてジェイド先輩の授業が終わるのを待っていた。

「お待たせしました。どのくらい待ちましたか?」

「今さっき来たところなんだゾ」

グリムが返事をしてくれる。

「それは良かったです。行きましょうか」

『はい』

ジェイド先輩と並んで歩き出す。

「昨日の3人組ですが、停学になったのはご存知ですか?」

今日の授業にいないな、とは思っていた。

『そうなんですね、知らなかったです。先輩が何かしたんですか?』

結局怪我もなく。
こちらが魔法で撃退したのを先生達へ報告するわけにもいかず、録音データは手元に残ったままだ。

「いいえ何も」

どこからか学園長にまで話が及び対応してくれたのだろうか。

停学ということは暫くすればまた顔を合わせることになるだろう。

『憂鬱ですね……』

腕に抱いたグリムをぎゅっと抱え直す。

「何かあればオレ様がやっつけてやるんだゾ!」

『はいはい』

元はといえばグリムがいなくなったから絡まれたのになぁと、少し恨めしく思う。

「その件ですがご安心を。うちの寮生だったので調教済みです」

調教とは。

『やっぱりしてるじゃないですか』

「停学の件には関わっていませんよ?直接的には、ね」

間接的には関わっていたということだろう、学園長にまで話が行ったのはきっと先輩の仕業だ。

「寮生の躾をするのも副寮長の努めです。致し方ないでしょう?」

悪い笑みを浮かべていたのは見なかったことにしておく。

どんな躾なのか想像したくもない。

「あんな事をしでかしたのにまだ学園に残ることを許容してあげているんです。感謝して欲しいくらいですよ」

うん、先輩ってこういう人だった。

『はは、ちょっとスッキリしました』

喧嘩を吹っ掛けてきた相手を思いやれるほど、私は善人ではない。

「ユウさん」

『はい?』

ふわりと手を取られる。

「なかなか良い経験でしたね」

笑顔で語るにしては腹の立つ出来事だったが、先輩は楽しめたようだ。

『勉強にはなりました』

自分が至らないこと、この世界では護ってもらわなければいけないことに改めて気付かされた。

「僕は愛が深まりました」

彼らは先輩の感情を良くも悪くも揺さぶったということだろう。

『そうですか』

呆れつつ返事をする。

「貴女はどうですか?」

『私ですか?私は……』

助けを請おうとして第一に浮かんだのはジェイド先輩だった。

『最初からジェイド先輩のことしか考えてなかったですよ』

恋は盲目だ。

「そういう台詞はベッドの上だけにして欲しいものです」

『……先輩、どうしてもエロの方向に持って行きたいんですね』

「貴女の言葉が僕にそうさせるんですよ」

ちゅっと、グリムの目の前で手にキスするものだからグリムが暴れる。

「ぎにゃーー!!オレ様の近くでそんなことするんじゃねー!!!」

「グリムくんがここにいるのが悪いんでしょう?」

空気を読んでくださいと、ひょいとつまんで下ろしてしまう。

「ねえ?ユウさん」

息をするように唇を奪われた。

「オメーら、ここは廊下だってのによくそんなことができるんだゾ、恥ずかしくないのか?」

「ええ全く」

『私には羞恥心があるんですよ……先輩になくても』

そこのところは考慮してくれない。

「付き合ってられねーんだゾ」

『待ってよグリム』

「お送りしますよ」

グリムを追って校舎を出る。

『そういえば先輩、あの噂放っておいていいんですか?』

ジェイドはゲイで監督生と付き合っているらしい。
そんな噂を聞くようになった。

「僕がゲイだというアレですか?言ったでしょう、僕は他人からの評価に興味が無いと」

『そういえばそうでしたね』

成績も興味が無いと言っていたっけ。

「ユウさんは僕と噂になるのがお嫌ですか?」

『先輩とだから嫌じゃないですよ』

付き合っているのも男が好きなのも私にとっては事実で、何ら害は無い。

「それは良かったです……これで無闇に手を出してくる輩はいなくなるはずですし……」

と、何やらぶつぶつ呟き始めた。

『……ねえ、先輩?今回のこと、どこから予見してたんですか?』

「さあ、どこからでしょうね。あの3人の行動は把握していた、と言っておきましょうか」

それ以上は秘密ですと言う先輩は、やっぱりムシュー・計画犯で。

こういうところは怖いなぁと思う。

『まあ、どんな先輩も好きなので、なんでもいいんですけどね』

ジェイド・リーチ、表面上は怖くないのに怖い、私の恋人。

「急にどうしました?」

『どうもしませんよ』

笑って誤魔化して、前を行く小さな背中に追い付こうと駆け出す。

『グリム待って!一緒に帰ろう!』

「ふふ、仕方がないですねぇ」

私の後ろから先輩が走って来て、グリムと合流した。

「オメーら遅ぇんだゾ!」

『グリムが先に行っちゃうからでしょ、もー』

「一緒に帰りましょう」

「ふん。今回は許してやるが、次はないんだからな!?」

「おや、それは僕とユウさんを二人きりにしてくれるということですか?」

「言ってねぇ!!」

ぷんすこ怒るグリムをなだめて帰路に着く。

「手でも繋ぎますか?」

差し出された先輩の手を、私は迷わず取った。

『はい、喜んで』

愛しい時間。

どうかこの時が長く続きますように、そう願って。



END


⇒あとがき

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