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刀剣男士と私の本丸事情
暖の取り方



『よこ、座る?』

自分の左側をとんとん叩く。

「……とれるか」

何やらボソッと呟いたが、私には聞こえなかった。

「たいした話はできないぞ」

そう言いながらも隣に座る。
隣というか真横に。

『えっと、大倶利伽羅?』

「なんだ」

気にも留めていないのか、大倶利伽羅は普段と何ら変わりない。

『近くない?いや、嬉しいんだけどね!?』

あわあわと私一人が狼狽えていた。

「寒いんだろ、暖をとれ」

『だん?』

何から?
まさか大倶利伽羅から!?

ほらと腕を差し出される。

『どんな暖のとり方……』

呆気にとられながらも、そっと大倶利伽羅と腕を絡めた。

『あったかい』

大倶利伽羅は分かっているのだろうか、この胸にある愛情を。

「そうか」

大倶利伽羅のジャージをきゅっと握り締める。

『……』

大倶利伽羅はジャージ姿で、最近はもっぱらそうだった。

『内番ばかりで嫌になってない?』

腕のあたたかさに罪悪感が増す。

「鍛錬の一環だろ、わかってるさ」

『でも……いくさに出たいんじゃないの?』

いくさに出れば業物だと証明できる、大倶利伽羅はそう言っていた。

「……あんたが求めるならな。それが道具としての在り方だ」

道具。
その言葉を聞いて手紙の内容が頭をよぎった。

――俺は政宗公が軍陣に帯びた刀になってるが、違う。その頃には大きないくさなんて起こりようがなかった。

『……道具でいたいの?』

私を映す金色の瞳が少し揺らぐ。

「…………」

その問いに答えは無かった。

「……戦わない俺は、あんたの何になれるんだ」

代わりに質問を返される。

『私の何に?』

道具じゃない大倶利伽羅は、一体私の何なのか。

『……家族、かな』

「家族?」

うん、と頷いて空を見上げる。




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