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刀剣男士と私の本丸事情
略さず呼べ



縁側には寒そうに自分の手を擦り合わせる主がいた。

その背中はいつも寂しそうに見える。

――刀である俺は、あんたにとっての何になり得るんだろうな。

刀は殺し、殺される為の道具だ。

時間遡行軍と戦い歴史を守る。

今の俺なら、刀本来の役割以上に何かできるんじゃないのか……

そんなことを考えていた。



縁側に腰掛けた私は冷えた手に、はーっと息を吹きかけた。

『思ったより寒くないかな』

誰へともなくぼやきながら、真上に昇る太陽を見上げる。

『日が照ってるから暖かいのか、』

暦の上ではもうとっくに冬のはずなのに、空気はまだ暖かい。

『暖冬なのか……』

ふと人の気配を感じて振り返る。

ぼんやりと私を見つめる大倶利伽羅がいた。

『倶利ちゃん?』

何か思い悩んでいるのだろうか。

「その呼び方はやめろ」

すぐに諌められて、どうしたのと聞くタイミングを逃してしまった。

『伽羅ちゃん呼びはいいの?』

そう聞くと、むすっと不貞腐れた態度になる。

「あいつらが勝手に呼んでるだけだ。あんたはいつも通り呼んでくれ」

『たまには「よくない」

間髪入れずに遮られた。

『……まだ何も言ってないんだけど』

「あんたは他のやつが嫌がることはしないんだろ」

聞くでもなく、大倶利伽羅は真顔で断言してくる。

『それはそうだけど……愛称は愛があるから呼ぶのであってね』

「そんな愛はいらん」

説明も虚しく拒否された。

『はー……』

うなだれる私の頭に大倶利伽羅の手が触れる。

「愛があるなら略さず呼べ」

ぽんぽんと頭を撫でてきた。

『愛してるなら略さず呼べと?』

そこまで言うなら仕方が無い。

「……なにか違わないか?どんな耳をしてるんだあんたは」

眉間にシワを寄せた大倶利伽羅は、心底呆れた様子だった。

『好きなら略さず呼べばいいんでしょう、大倶利伽羅?』

「はあ、まあそれでいい」

複雑そうな顔が少し面白かった。




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