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刀剣男士と私の本丸事情
目薬の無い現実



『ところでこれは、コラボで何と戦うの?』

聞くと一瞬時が止まった様だった。

「……無論、きみの瞳を守る為に俺たちが戦うのさ!」

グッ!と拳を天に掲げる鶴丸。

『いやだから何と』

答えない鶴丸に代わり、ぼそりと大倶利伽羅が答える。

「乾燥だ」

「おいおい、瞳乾燥主義者と言ってくれたまえよ」

ここは大事だぜと鶴丸が説明する。

『刀剣男士である必要性……』

「ないな」

ばっさり言い放った。

「ド直球だな加羅坊は、こりゃまいった!」

楽しそうに笑う鶴丸だったが、急に真面目な顔になる。

「しかし売り方はいただけないなあ。販売店舗、限定数、発売日前の販売は規制しておくべきだったろうに」

惨状を見ただろう?と私のスマホを指差す鶴丸。

『あと購入上限も。店舗にもよるだろうけど、基本薬局は販売規制がガバガバらしいって』

ネット情報だから実状は知らない。

「えらいぶっこんでくるよなぁきみ」

それには理由がちゃんとある。

『薬局9軒はしごしたけど手に入れられなかった現実』

「俺たちの人気を甘く見すぎたな!」

『目薬ぃぃ……』

嘆きつつ大倶利伽羅にぎゅううと抱き付く。

「おい、力を入れすぎだ」

ずいっと目薬を差し出された。

「ここにあるだろうが」

あるよ、確かに有る、設定だ。

『これはね、妄想なんです。実際には無いんです。目薬ちょうだい鶴丸!』

「俺に言われてもなあ」

鶴丸は肩をすくめる。

『再販待ってる、全国販売待ってる』

「切実だな」

どうか再販お願いします!

「……なんだこの流れは」

そして離せと大倶利伽羅が言う。

『目薬無かった、ください。な話』

「にしてはきみ、ちょっと悪態つきすぎじゃないか?」

すっっっごい楽しみにしていたのに、無かった現実を見ろと!?

『だって!清涼感あるの無理だけどせっかくのコラボだから眠気覚ましに買おうと思ってたのに!』

「そんなに俺の目薬が欲しかったのか」

鶴丸が頭をなでなでしてくる。

「よし、代わりに俺がきみの目に驚きをもたらそう!」

じいっと鶴丸を見つめる。

『……いらない』

驚きより残る物が欲しかった、刀剣乱舞のパッケージ……

「これは目薬に俺が負けたのか?なあ加羅坊」

「知らん」

勝ち負けの話じゃないんです。

『愛してるよぉお大倶利伽羅ぁ』

「どうでもいいな」

口では酷いけど、抱き締められたままでいてくれてるのは優しさだった。

「見せつけてくれるねえ」

『鶴丸も愛してる』

取ってつけたような台詞に鶴丸は溜息を吐いた。

「きみのそれは家族愛だろ?」

『うんそう、愛してるから目薬ください』

「結局はそれか」

大倶利伽羅は呆れながらも背中をポンポンしてくれる。

『目薬欲じがっだよぉぉ……』

全国の審神者に幸あれ。



<おしまい>


⇒おまけ


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あきゅろす。
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