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刀剣男士と私の本丸事情
目潰し目薬の話



『そんなことより目に滲みて……あ』

障子に誰かの影が映る。

「茶菓子を持ってきたぞ」

大倶利伽羅の声だった。

『はいはーい、今開ける。いらっしゃい』

すっと障子を開けて出迎える。

「元気そうだな」

どうやら大倶利伽羅は私の様子を見に来てくれたらしい。

『ああうん、鶴丸が目薬をくれたおかげかな』

「鶴丸か」

手元のお盆には3人分のお茶とカステラが乗っている。

「気が利くじゃないか伽羅坊、いや、光坊か?」

まあそうだなと言いながら大倶利伽羅は天板に盆を置く。

『ありがとう』

「礼なら光忠に言え」

大倶利伽羅が私の隣に腰掛けた。

『持って来てくれてありがとう』

「ああ」

無愛想に答える大倶利伽羅に目薬を見せる。

『ほらこれ!鶴丸の目薬』

目薬を見ると穏やかな表情で微かに笑う。

「良かったな」

『うん。大倶利伽羅も使ってみる?清涼感がすごすぎて私には無理だった』

そっと目薬を差し出す。

「ああ!伽羅坊も試してみるといい、俺ぷろでゅーすだ」

それを聞いた大倶利伽羅の顔が毒でも見る様に歪む。

『鶴丸仕様は外装だけで、中身は正規品だから安心して』

「そうか」

納得すると躊躇うこともなく下瞼を引き下げ点した。
目を閉じ目頭を軽く押さえる。

「すーすーする」

完璧な点眼方法だった。

「それだけか?もっとこう、ないのか伽羅坊!?」

「ないな」

大倶利伽羅は清涼感が強くても平気らしい。

『これでも驚きが足りないなんて』

私には結構な驚きだったのに。

「点した瞬間に違う景色でも見えれば驚きなんだがなあ」

鶴丸の呟きは斜め上をいっていた。

『それ目薬じゃなくて兇器』

違う景色が見える時点で意識が飛んでる気がする。

「時間遡行軍に使えるか?」

「使えないな。どうやって注すつもりだ」

ありもしない目潰し目薬の話が広がっていく。

『スプレーの方がまだ使えるんじゃない?』

「暴漢スプレーというやつだな!」

目潰し液を掛けられる対象になっている時間遡行軍は暴漢か何かか。

『暴漢じゃなくて防犯ね』

さり気無く訂正しておく。

「相手を怯ませるには馬糞より使えそうだと思わないか?」

『馬糞……』

戦場に馬糞を持っていく前提の話をしているのは何故だろう。

「遠戦には投石兵だろう?」

打刀の大倶利伽羅が聞く。

「…………俺は太刀だからな!」

その間は何だろう。
投石兵を装備できない太刀は何を装備しているのか。

『……え、まさか持参してる?』

「ははっ、まあいいじゃないか!」

笑って誤魔化された。

「そーら、目潰しだ!」

鶴丸は兼さんの常套句を言いつつ大倶利伽羅に目薬を飛ばす仕草をする。

「俺には利かん」

完全に話を逸らされてしまった。

『まあいいけど』

刀剣男士が怪我をしなければ、敵が糞に塗れようがどうだっていい。




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あきゅろす。
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