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刀剣男士と私の本丸事情
初期太刀は孤独を知る



隣にどっかりと腰掛けた同田貫は、いつもの黒ジャージを着ている。

極になって帰って来てからの出撃回数はそう多くない。

すっかり見慣れてしまったジャージ姿に罪悪感が湧いた。

『……最近内番ばっかりでごめんね』

「何だよ急に」

実戦刀たる彼の在り方に、私は応えられていない。

『だって同田貫いわく「戦に連れてってくんねーと意味ねえ」んでしょう?』

まあなと同田貫は同意する。

「俺としちゃあ物足りねえが……鍛練の一環だろ、わかってるよ」

最近よく同田貫は考え込んでいるが、出陣の有無が理由ではないらしい。

『じゃあ何か悩んでる?』

「悩んでねえよ」

同田貫はキッパリと答えた。

「だがまあ……」

私を映す金色の瞳が少し揺れる。

「伝えてえことは、あるってこったな」

自分自身に言い聞かせるような口振りだった。

『伝えたいこと?』

聞き返すと、ああと頷く。

「俺は初期刀じゃねえが、あんたの初めての太刀……いわば初期太刀だろ」

何を言われるかと思えば。

『っふふ、なにそれ』

胸を張って言う姿に笑ってしまった。

『今は打刀でしょう?』

初めは太刀の振り分けだったが、刀種が打刀になったのはいつの頃だったか。

「そーだけどよぉ……それはまあ置いといて、だ」

同田貫は居ずまいを正し、視線を合わせる。

「古株の俺はよーく分かってるんだぜ、あんたのことをよぉ」

その眼差しは真剣だった。

「あんたがいなけりゃ、今はなかったってこともな」

一理はあるが、同意しかねた。

『……そうかな』

私という審神者がいなくても、きっと他の誰かが役割を担っていたことだろう。

『同田貫も、他のみんなも居てくれたから今があるんだよ』

遠くの空をみやる。

全ては私一人では成し得なかったことだ。

「謙遜するのはあんたの癖だよなぁ」

『謙遜じゃなくて真理でしょう?』

苦笑しながら答えた。

「真理ねえ」

曇りない瞳が私を見つめる。

「……あんたの心はいつも独りだ、俺はそれを知ってる」

唐突に告げられたことは……事実だった。

誰といても、何をしていても埋まらない何かが心にはあった。

『なに、それ』

心の闇が露呈してしまったような心境になり、唇が震える。

「生き物ってのは皆孤独なもんさ、独りで生きて独りで死んでいく」

それでも、と同田貫は続ける。

「あんたの孤独を知ってる俺は、ここにいるぜってなあ」

それを伝えたかったのだと言う。

『……っ』

大きく息を吸い込んでも胸が苦しい。
目頭まで熱くなってきた。

「一人じゃねえって言っても、あんたは納得しねえだろ?」

確かに、同田貫は私のことをよく分かってくれていて。

『……そうね』

言いながら涙を隠すように、右手で目を覆った。

「だよなあ……」

すすり泣く息が聞こえているはずなのに、同田貫は暫くただ隣にいるだけだった。




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あきゅろす。
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