刀剣男士と私の本丸事情
心も共に在りたい
戻って来た長谷部は、たくさんのチューリップを携えていた。
「こちらを主に」
その色は全て紫色で。
『……何で長谷部が贈っちゃうの』
涙が出そうだった。
私が贈りたいと言ったのに。
「俺の心はいつでも審神者様と共に在りますよ。いいえ、心だけでなくこの体も」
ふわりと微笑んだ顔が綺麗だと思った。
『ありがとう長谷部、すごく嬉しい』
「俺も喜んでいただけて嬉しいです」
にこにこ、と今度はにこにこと笑う。
長谷部も分かっているのだろう、今から何を言われるのか。
『……でさ、これ光忠に持って行ってもいい?』
言われたくないであろう言葉を発する。
「ええ、勿論主の好きなように。……くっ、例えその花を食べることになろうとも、俺の気持ちは……気持ちはっ」
心の声までだだ漏れだ。
「おい、泣きそうだぞ」
大倶利伽羅は怠そうに指摘した。
「誰がだ!」
あまりにも不憫に思えて、提案する。
『えっと、やっぱり紫色だけは部屋に飾ろうかなーって?』
「そんな情けなどっ無用です!お気になさらないでください主!俺が光忠の所へ持って行きます!」
受け取ったチューリップを全部奪われた。
『えっ!?ちょ、待って待って!』
本気で全部持って行かれる!?
『一輪だけ!一輪だけください!!』
ひゅっと束から一輪引っこ抜く。
「はい?情けは無用と……」
『違うの!長谷部が育てて贈ってくれた花だから部屋に飾っておきたくて』
嬉しくて、ただそれだけだ。
「これだから貴女はっ……!どうしてそんなに可愛いんです?!」
「天然だからな」
大倶利伽羅が答えた。
「っく!そ、う、だ、な!」
甘い雰囲気になる訳もなく、シチュエーションはぶち壊しだ。
「持って行って参ります、ええすぐに、すぐに!戻って来ますよ!」
『え?あー、うん行ってらっしゃい』
長谷部はぷりぷりと怒って行ってしまった。
「口を挟まない方がよかったか」
そう言うがさほど気にした様子はなく、大倶利伽羅は横に座ったままだ。
『面白かったけどね、長谷部的には邪魔だーって感じ?』
「ふん……おい、」
軒下に一輪落ちていた様で、大倶利伽羅が拾ってくれる。
「受け取っておけ」
紫色のチューリップ。
心を共にしたい人へと贈る花。
『ありがとう……倶利ちゃんも心は共に在るって?』
聞けばふっと微笑むくせに、口から出るのは罵倒の言葉。
「馬鹿なのか」
その眼差しは優しくて。
『馬鹿だから、良いように受け取っておくよ』
手にある二輪のチューリップを見て思う。
今日はきっと紫色のサラダが食べられるに違いない、と。
<終>
⇒あとがき
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