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刀剣男士と私の本丸事情
怒りの矛先は光忠へ



長谷部は不機嫌だった。

「光忠、いるか?」

「やあ長谷部くん、どうし……っ!?」

光忠の眼前に刀が突き付けられる。

「お前っ、俺に黙っていたただろう!?」

両手を挙げる光忠には、何が何やらさっぱりだった。

「え?えーっと、何のことかな?」

「チューリップだ!」

言われて花壇を思い出す。

「綺麗に咲いてたよね?」

「そうだがそうじゃない、用途についてだ」

用途、と言われて光忠はやっと理解した。

「ああ、食用だってことかな?アレは黙っていたと言うか」

聞かれなかったから伝えそびれていたと言うか。

「問答無用!」

ちゃき、と刀を構え直す長谷部。

「今僕たち問答してたと思うんだけど」

「揚げ足を取るな!」

事実を告げれば事態は悪化するばかり。

「はいはい、そう怒らないで」

渋々刀をしまった長谷部は光忠に詰め寄った。

「で、だ!主が俺に贈りたいと仰っていたんだが」

「突然だね、何をかな?」

近いよ長谷部くん、と光忠がなだめる。

「紫色のチューリップだ。主に花言葉はお前に聞けと言われてしまってな」

「……ふっ、彼女に似合うのはオレンジ色じゃないかな」

オレンジ色のチューリップの花言葉は照れ屋だよ、と光忠が言う。

「何でもいいから早く教えろ」

急かす長谷部に光忠は一年前の記憶を手繰り寄せる。

「はいはい。紫のチューリップの花言葉は確か……不滅の愛、永遠の愛。ずっと心を共にしたい相手に贈るものだよ」

「心を共に……」

呟いて長谷部は微動だにしなくなった。

「もしかして照れてるのかい?」

ほんのり赤く染まった頬を見つめる。

「いや、俺もきちんと向き合わねばなと思っただけだ」

「そんなこと言ってるけど顔、赤いよ?」

ここ、と頬を指差す。

「なっ、うるさい!」

君たちを見ていたら飽きないよと光忠は漏らす。

「……ふふ、そうだ長谷部くん、チューリップ摘んできてもらえるかな?」

「何故俺が……っ、」

光忠が何を言いたいのか、すぐに分かった。

「っ、分かった。行って来よう」

チューリップを主に贈って来いというのだろう!?

「何色でもいいからね」

微笑む光忠の底が知れない。

「分かっている」

さて、とびきり美しい紫色を摘むとしよう。

「主、待っていてください!」

今度はきちんと理解した上で、心を込めて俺から貴女へと贈ろう。




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