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刀剣男士と私の本丸事情
腰巻きが欲しい



「そんなまさか、チューリップには毒があると聞きますが」

長谷部が驚いた顔で聞いてくる。

『球根だけね。詳しくは知らないんだけど、ちゃんと処理したら球根も食べられるって』

「光忠だろ」

大倶利伽羅が補足した。

「あの男の差し金かっ!」

『差し金というか、この花食べられるんだよってなって、じゃあ育てて食の足しにしようかって』

それで球根を買い込んで来た所で長谷部が育てると言ってくれて。

「俺は今まで貴女の笑顔の為にと……」

『そんなに落ち込まないでよ、観賞後に食べられるってお得なんだし』

一瞬チューリップを大量に食べる所を想像して、酷いことになったが。

「端正込めて育ててきたものが、皆の腹にも入るだと!?この俺が主のためだけに育てていたのに!?」

向きになった長谷部は大倶利伽羅をキッと睨んだ。

「…………」

睨まれた本人は気だるげな顔をして長谷部の視線を受け止める。

『倶利ちゃんに当たらないでよ、この件に関して悪いのは言ってなかった私と光忠なんだから』

「そう、ですね……申し訳ありません主」

すぐに頭が冷えたのか、長谷部は深く頭を下げた。

「すまなかったな、大倶利伽羅」

そして長谷部は姿勢を正して言う。

「主、すぐに元凶の首を取って参ります」

……頭冷えてなかった。

『はっ!?だめだめ』

「では!」

ぴゅーっと走り去ってしまった。

『はせ、あー……光忠大丈夫かな』

「放っておけ」

長谷部にも光忠にも悪いことしちゃったなと落ち込む。

『隠し事は良くないよね……』

騙したみたいになってしまった。
いや、みたいではなく事実そうだ。

「楽しそうにしてたから言い出せなかったんだろ」

『……それは言い訳だよ』

後で長谷部にきちんと謝罪しなくては。

『ねえ倶利ちゃん』

「なんだ」

そそそっと隣に寄り添う。

『……何でもないよ』

「ふん」

大倶利伽羅の隣はあたたかい。
この本丸は、誰の隣であっても。

『そうだ、倶利ちゃんの腰巻も紫だよね?』

今はジャージ姿だから身に着けていないけれど。

「俺のこしまき……?」

腰巻といえば、昔でいうところの女性下着だということを忘れていた。

『いやあの、下着じゃなくってね』

「変態か?」

真顔で聞かれるとグサッときた。

『変態違う。うーん……腰ひも?腰ぬのー……は赤いひらひらか』

「いい、何を言ってるのか分かった」

あれだろと、きゅきゅっと結ぶ仕草をする。

『そうそれ。あれ欲しいなー』

紫色は深い愛の証。

「やらないからな」

『ちょっとだけ貸してって言ったら?』

「何に使う気だ」

用途はただひとつ!

『巻くの』

「何に」

『自分に!』

元気良く答えた私とは反対に、大倶利伽羅の元気はなかった。

「……やめろ」

『ああー、買えばいいのか』

大倶利伽羅は頭を抱えた。

「勝手にしろと言いたいが、やめておけ。長谷部の機嫌を損ねるぞ」

『心配してくれてる?』

「……あいつが不憫なだけだ」

そう言ってもしゃもしゃとチューリップを口に運ぶ。

『天ぷらにしたら美味しいと思う?』

「食感を楽しむなら良いんじゃないか」

『そうだよねえ、素材の味がねー』

ほとんどしないから、本当どうするんだろうこれ。




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