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刀剣男士と私の本丸事情
光忠と万屋で



一年前の光忠とのやりとりを思い出す。


――万屋。

『エディブル……フラワー?』

球根が入った籠に書かれた値札を見て光忠に声を掛けた。

『光忠ー、エディブルフラワーって何か知ってる?』

「どうしたんだい?へえ……これは珍しい種類だね」

ひょいと球根を手に取って説明してくれる。

「品種改良されたものでね。edibleの意味は食用、つまりは食用花ってことだよ」

『食用花?』

ぴんと来ずに聞き返した。

「食用菊が身近なんじゃないかな」

菊と言われて浮かぶのは刺身に添えられたつま菊だ。

『あー、お刺身のあれか』

よくお造りで目にする。

「ちゃんと食べられるんだよ?」

知ってるかい?と問われ、答えた。

『うん、私は基本的に食べないけどね』

醤油に散らしていただいたりするが、菊の風味は独特で……ちょっと苦手だ。

「味を楽しむ花か、菜の花や桜の塩漬けがそうだよね」

桜の塩漬けといえば……

『桜餅!葉っぱが美味しくて!』

「葉っぱは……花じゃないから違うかな」

困り顔の光忠に諭される。

『エディブルリーフだったかあ』

「桜餅の葉っぱ、僕も好きだよ」

フォローされても嬉しくない。

「それでこれ、買って帰るかい?」

花壇がまだ空いているからそうしてもいいんだけれども。

『チューリップ、食べるの?』

「香りのきつい花じゃないから、サラダに彩りとして加えるとかね。観賞するだけよりは良いんじゃないかな」

食べたことの無い物を買って帰るのか。

『2倍楽しめるってやつだね』

ともあれ誰が育てることになるのだろう。

「花の世話は長谷部くんがしてくれるんじゃないかな」

信頼という名の押し付け……ではなく事実なのだからよしとしておく。

『最終的に誰も立候補してくれなかったらそうだね。うーん、色いっぱいある』

赤 白 黄、桃 橙 紫 緑。

「長谷部くんの紫色、お勧めだよ」

『何で?』

ここにね、と指差される。

「花言葉が君たちにぴったりだと思ってね」

値段の横に小さく文字が添えられていた。

『不滅の愛?っふふ、どうかな。でも心はずっと一緒に在りたいと思ってるよ』

「のろけかい?まあ言った僕が悪いんだけどね」

他の花言葉にも目を通していく。

「黄色は報われない感じだからやめておくかい?白もちょっと悲しいね」

実らない恋、正直……
失われた愛、新しい恋……

『そうだね。赤、ピンク、オレンジと緑は買って、白は……うーんいいか、白もね』

そうして購入に至ったのだった。




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あきゅろす。
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