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刀剣男士と私の本丸事情
お互いの胸の内



『もー、こんなところに居た』

長谷部は刀装部屋に居た。

今は資源も豊富にあるので、各刀剣男士には刀装も完備している。
多くあって困ることはないけれど、今はそこまで必要でもない。

「主」

長谷部の手には金刀装があった。

「お納めください」

差し出された手ごと私はそれを包む。

『うん、ありがとう……って違う。今はそれよりも言いたいことがあって』

一瞬怯んだ長谷部の手を握りしめる。

『ねえ。お願いだから長谷部……私から逃げないで』

正直、好きな人に避けられるのは辛い。

「俺は逃げてなんて」

逃げているくせに。

『私分かってる、長谷部は付喪神で私とは違うものだって。だから長谷部が私を避けてることも』

「……それなら主、どうか聞き分けてください」

そっと手を解かれて、刀装だけが私の手に残る。

「俺は審神者様の御側で仕えていられれば、それでいいんですよ」

寂しげに微笑む長谷部に、涙が溢れそうだった。

「ああ主、泣かないでください」

ここで泣いたら私の決意が台無しだ。

刀装をぎゅっと握りしめ、長谷部に付き返す。

『これは長谷部が使って。それからこれお守り(極)。あと泣いてないから!』

お守りも渡しつつ捲し立てる。

「は、はい、主命とあらば。ありがたき幸せ……?」

『あのね、長谷部。今日は本当は長谷部とゆっくり話がしたかったから、起こしてもらったの』

「俺と?」

いや、違うか。
話しがしたかったというより、話を聞いて欲しかったというのが正しい。

『長谷部に伝えておきたい事があって』

「それは……情愛の類ですか?」

ほら、やっぱり長谷部は私の気持ちに気付いていた。

『うん、そう』

「ならば言わないでください、それが貴女の為だ」

私の為だと言うが、長谷部自身の為でもあるのだろう。

『何が私の為かは自分で決める』

長谷部の為を思うなら、この気持ちは告げないでいた方が良いのかも知れない。

私は人間だから、長谷部を置いて先にゆくことになる。

『長谷部、私はあなたが好き。愛してる』

幸せな記憶は未来に繋がって行くのかも知れない。

『でも私には、何が長谷部の為になるのか分からない』

けれども逆に、そこに引き留めて縛ってしまうのかも知れない。

『だからずっと言えなかった。受け入れてくれなくていいから、忘れないでいてほしい』

私があなたを好きなこと、長谷部を心から愛していた審神者がいた事実を。

「主……」

長谷部は苦し気な表情を浮かべる。

「……愛して欲しかったのは俺の方です」

『え?』

「主が俺に気持ちを伝えないのは、失礼ながら貴女自身の為だと思っていました」

自分が辛い思いをしたくないからって?

『そんな、違っ……』

「――ええ、違った、そうではなかったと今知りました。貴女は俺を思って躊躇っていただけだ」

私の左手をそっと取って、指先にふわりと口付けを落とす。

『……っ、長谷部?』

「貴女が俺を望んでくれるのなら、俺もそれに応えましょう」

長谷部は私の左頬にそっと手を添える。

「だから『受け入れてくれなくていい』なんて、言わないでください」

泣きそうな顔で笑った長谷部が、とても綺麗だった。

『うん、ありがとう。もう言わない』

「主……いいえ審神者様、俺も貴女を愛しています」

真剣な眼差しが私に注がれる。

「どうか、最期まで共にあることを御許しくださいませんか?」

頬に添えられたままの長谷部の手に、自分の手を重ねて答えた。

『はい、喜んで』

並び立つ彼はへし切長谷部。

「涙など、今すぐ止めてみせましょう」

落とされた口付けは温かで、涙はすぐに止まってしまった。



<おしまい>


⇒おまけ。キャラ崩壊&下ネタ注意


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