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刀剣男士と私の本丸事情
忍耐の限界で猛ダッシュ



『はー、』

大きく息を吐いてー、吸ってー
元凶の名を呼ぼうとする。

『やーげっぐもが』

ぐぐっと口を押さえられた。

「審神者殿、薬研を呼んでどうするおつもりで?」

お持ち帰りしていただこうと、なんて言えない。

『う、叫ばないので離してください』

ぱっと離された隙に、部屋の隅まで逃げる。

『っ!!!』

誰かー、たすけてーーー!?

「……頑張ってみたのですが、私では主殿を楽しませることができないようです」

急に潮らしくなった一期を見てハッとする。

『違う、気持ちは物凄く有難いの!でもいち兄と過ごすならいつも通りが良くて』

あーもう、何を言ってるのか自分でもよく分からなくなってきた。

「主殿、申し訳ありませんでした」

『え?』

「少しからかいすぎましたな、赦していただけますか?」

居ずまいを正す姿はいつもの一期だった。

『なっ、なんだ、そっかー焦ったー』

言いながら座布団に戻る。

「ささ、もっと召し上がってください」

ずずいっと差し出されたのはきんつばで。

『いただきます』

食べ物の誘惑に負けて手を出した。

「あーんしてください」

『!?』

驚いて手からきんつばが落ちた。

「などとは申しませんから、っと……落とされましたよ」

きんつば、と包み紙のままのそれを手渡される。
心臓に悪すぎる。

『一期さん?』

「はい、主殿」

『長谷部か薬研を呼んで来ても良いですか?』

耐えられない、堪えられない!

「そうお望みでしたら如何様にも」

その答えを聞いて猛ダッシュで部屋を抜け出した。

『行ってきます!』



バタバタと走りましたとも!
薬研の部屋へ一目散に。

『やーげーんー!?もう嫌、助けてー!!』

「うおっ、どうした大将……泣きそうだなっ!?おおっ!?」

部屋から出てきた薬研の肩をわし掴んで揺らす。

『私いち兄をレンタルしたいなんて一言も言ってない!破壊力がやばいし、キャラが崩壊していくから今すぐ来てお願い!だいたい薬研のせいなんだからちょっとは気にしてくれたっていいじゃない!?それになんでいち兄なの、他にもっとあったでしょ!?』

ぜーはー。

「ちょっ、落ち着けよ大将」

「何事だ薬研」

私の喚きたてる声が聞こえたようで、長谷部が駆け付けてくれた。

『はーせーべー、うわーんっ!!!』

ひしっと長谷部の胸にすがり付く。

「悪戯がすぎたみたいでな、悪い」

悪かった、と私の頭を撫でる薬研の手を長谷部が掴む。

「主に何をした」

「まあその、なんだ」

「何をしたのかと聞いてる」

『うぅ……』

ぽんぽんと背中に触れる長谷部の手に安堵した。

それから、薬研がザックりと説明をして問題の部屋へと向かうことになる。




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あきゅろす。
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