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刀剣男士と私の本丸事情
主の影響を受ける刀剣男士



「主、笑顔ならいくらでも俺が」

「伽羅ちゃんだから意味があるんだよ、長谷部くん」

光忠はつんつんと箒の持ち手で長谷部をつつく。

「俺の笑顔には価値がないと言うのか!?」

「貴重ではないよね」

光忠はバッサリ言った。

「どういう意味だ」

「審神者ちゃんといる時はだいたい笑顔だよね、自覚ない?」

少し考えて長谷部は肯定する。

「そう……だな」

「長谷部くんの負けだね」

「笑顔が多い方が負けというなら、俺はそれで構わん」

大倶利伽羅と楽しそうに談笑する主を見つめる。

「俺ではあんな顔をしてもらえそうにないな」

「長谷部くん、もしかしてしょげてるのかい?」

更につんつんとつつく光忠。

「やめろ」

はは、と笑って光忠は箒を引っ込めた。

「伽羅ちゃんが変わったのは彼女のおかげだし、僕も嬉しいよ」

「ああ、良い影響なだけに文句のつけようがない」

「妬けるかい?」

「いいや、主の向ける視線は親族へ対する慈しみのようであって恋情ではないからな」

妬いたりはしないと長谷部は言う。

「だが、少し寂しいとは思うんじゃないか」

他人事のように語る長谷部に光忠は同意する。

「僕もだよ、手の掛かる子が巣立って行くような感じがしてね」

「親バカというやつか」

「僕たち刀だよ」

何言ってるの長谷部くんと光忠は言う。

「主の影響だ」

「刀扱いしてくれないのは、優しくて残酷だよね」

「ああ……いや、そうでもない」

長谷部は言い直す。

「俺は恋仲になったことに後悔はしていない」

「そうか、そうだね。僕も彼女の所へ来たことに後悔はないかな」

「あるわけないだろう?」

「え?」

長谷部はキッパリ言い放つ。

「俺の主だぞ?」

「僕らの、だよね。独り占めはずるいよ」

長谷部は眉間に皺を寄せる。

「明日は遠征に出向かせてやる。奥州合戦だ、適任だろう?」

「地味な嫌がらせかい?……僕が丸1日開けた時の晩ご飯、悲惨だったらしいじゃないか」

それでも行かせるんだねと。

「……考えておく」

「はは、良い決断をしてほしいな」

長谷部の嫌がらせは自分たちの首を締めることになる。

「ご飯って大事だよ」

「昼食は問題無かったんだがな」

夕飯の闇鍋を思い出して身震いする。

「あれはもう御免だ」

「不味かったけど面白かったって、短刀たちが言ってたよ」

苦い思い出も楽しい思い出も沢山だ。

「食べ物で遊ぶなと一期は教えていないのか」

「後でちゃんと叱ってたみたいだけどね」

これからも皆で共に歩き日々を重ねてゆく。

「苦労するな」

「お兄さんだから仕方ないんじゃないかな」

主の笑顔のため。
明るい未来のために。



<終>


⇒あとがき


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