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刀剣男士と私の本丸事情
光忠の役回り体験(倶利伽羅



私は奥の大倶利伽羅にそっと駆け寄る。

『倶利ちゃん、さっきはありがとう』

「なんのことだ」

手を止めず、視線だけをよこす。

『もう、分かってるくせに』

「……あまり考え込むなよ、あんたはよくやってる」

ふいっと顔を背けながらも、励ましてくれた。

『倶利ちゃん、いつもありがとう』

「俺は事実を言ったまでだ」

何だか泣きそうだ。

「あんたは……バカだな」

2回目のバカいただきました。

『……そうだね』

せっせと作業する長谷部を見て、頑張ってるなあと思う。

『もらったぶんは倍で返さないと、その努力をすることが大切なの』

うんうんと一人納得する。

「なにも倍で返す必要はないんじゃないか」

『同じだけーとかは嫌、ちょっとでも多くのものを私は皆に返したい』

にっこり大倶利伽羅に笑いかけると、鼻で笑われる。

「ふっ、やっぱりあんたはバカだ」

「お前の言い様は気に入らんが、俺も少しは思ってますよ」

長谷部が会話に入ってきた。

「俺達が今こうして穏やかに過ごせているのは主のおかげです」

『それは皆の力で』

「それも否定しませんが、本丸の生活についてはどうです?」

内番に始まる家事諸々。

『家事は殆ど光忠が……』

「あれは喜んでしていることですから数に入れないでください」

その他となると、やっぱりそんな役に立てていない気がする。
私のしかめっ面に大倶利伽羅がため息を吐いた。

「はあ……あんたが居なかったら俺達は今ここに存在してないだろ」

『それは、そうだけど』

審神者となった私が居なければ、彼らが顕現することも無かった。
しかし、審神者が私である必要はどこにもないのだ。

「今の生活は貴女あってこそのもの。審神者様のいない本丸にはなんの価値もない」

別の主に仕えていても、長谷部はそう言うのだろうか。
そう考えて少し暗い気分になる。

「はあ、揃いも揃ってバカだな」

大倶利伽羅は盛大にため息を吐いて、何で俺がとぶつぶつ言って続ける。

「あんただから、俺達はこうしていられるんだ。それにそいつとも仲良くやれているんだろう?」

長谷部の方を見る。

「あんたも、主がこいつで良かったくらい言ってやったらどうなんだ」

あんたも、と長谷部に言うなら大倶利伽羅自身もそう思ってくれているのだろうか。

「お前に促されて言うのは癪だがな」

咳払いをして長谷部は私に向き直る。

「審神者様、俺は貴女が主で良かったとそう思っています」

胸に手を当てて、恭しく一礼する長谷部。

『なんか……ありがとうね』

ごめんねという言葉は飲み込んだ。

「なんだ、今日はよく喋るじゃないか大倶利伽羅」

不貞腐れた様子の長谷部に大倶利伽羅は目を合わせない。

「あんたが不甲斐ないからだろ」

「なんだとっ!?」

『まあまあ落ち着いて』

彼らはいつも私を支える。




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あきゅろす。
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