刀剣男士と私の本丸事情
遠征の事と不甲斐なさと
「はあ、あんたは長谷部に用があったんじゃないのか」
『それはそれ、これはこれでね!』
ぐいーっと顔面を手のひらで押さえつけられる。
『うぐ、いたい痛い』
対抗して頬をむにっとつまんでみた。
「やめろ」
『そっちこそ』
ぎぎぎぎと、しばらくやり合っていると背後から探し人の声がした。
「何をしているんです?」
振り返ればそこに長谷部が。
『「…………」』
気まずい。
「 な に を していらっしゃるんですか?」
笑顔で怒っていらっしゃった。
「俺は知らないからな」
パッと大倶利伽羅は離れて馬の世話に戻る。
『えっ、そんな殺生な』
「さて主、何をしていたのか説明していただけますか?」
にこにこ。
『ええっと、長谷部を探していまして』
「はい、こちらにおりますよ」
にこにこ。
『あまりにも見つからなかったので倶利ちゃんと戯れていまして』
「ええ、大倶利伽羅を大層愛していらっしゃるようで」
にこにこ。
『それは誤解でー……も、ないんだけど意味が違くてですね』
「はい、存じておりますとも」
にこにこ。
『じゃあ何でそんなに笑顔なの』
「多少いらついてはいますね」
ふぅーっと、ため息を吐けばいつもの長谷部に戻った。
「それで?俺に何の用なんです?」
『えっと、次の遠征メンバーについてなんだけど』
居残ってほしい人材がいる。
「調子の良い面子を揃えて遠征へ出向かせる予定でしたが、何か問題がありましたか?」
『歌仙と小夜くんを居残らせてほしくて』
江戸に出陣できるほど強くない2人を、育てなくては。
「白金台に出るにはもう少し鍛える必要があるでしょうね、それでですか」
『うん、出陣して鍛えたいの』
せっせと作業する大倶利伽羅は、今更鍛える必要もなく強い。
「わかりました、代わりの者を探しておきます」
かくいう長谷部も強くなった。
『うんお願い』
私はいつも準備をして、彼らを送り出すだけだ。
出来ることといえば手入れくらいで。
私は彼らにとって、良い主で居られているだろうか。
「主?どうしたんです」
『えっ?』
ふわっと頬を親指で撫でられる。
「悲しそうだ。何かありましたか?」
『ううん、なんでもないよ』
長谷部はすぐに私の変化に気付く。
「話が終わったなら、手伝ったらどうなんだ」
助け船を出してくれたのは大倶利伽羅だった。
「そんなものより、主の方
『いいから、ほら!馬当番でしょ』
ぐいぐい背中を押すと、長谷部は渋々折れてくれた。
「わかりました、貴女がそう言うのであれば直ぐに終わらせてみせますよ」
くいっと腕まくりをして、長谷部も作業に取りかかった。
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