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刀剣男士と私の本丸事情
光忠の鮪御膳



「ところで主は、おにぎりの具では何が好きなんですか?」

梅も鮭も昆布も捨てがたいけど。

『ツナマヨかなあ』

「はい、ではそれを握りましょう」

『え、作ってくれるの?』

長谷部の手作りおにぎり!?

「もちろんです」

え、でもツナってどこから仕入れてくるんだろうか。

『ツナってどうするの?』

「作りますよ、月桂葉と油で煮たマグロでしょう?」

げっけいよう?

『ローリエのことかな』

「はい、確か薬研が育てていたはずです」

『え』

「月桂葉は生薬なんです。蜂さされやリウマチ、胃にも効くそうですよ」

『へー』

知らなかった。

「マヨネーズは光忠が作り置きしていますから、すぐにでも」

『いや、マグロが無いから』

それ以前にお腹いっぱいだし。

「ああそうでした、では仕入れて来ましょう」

『今から!?』

「はい。明日の為に行って参ります」

『ちょっ……』

引き留める暇もなく行ってしまった。



その晩は、マグロのお刺身と唐揚げと煮物とカルパッチョと……とにかくマグロ尽くしの御膳だった。

「はーせーべーくーーん!?」

と、光忠が怒っていたのは言うまでもない。

「何で切り身になっていないものを持ち帰ってくるのかな」

「その方が新鮮だろう?」

丸々持って帰って来た長谷部、恐るべし。

「はあ、まさかツナマヨのためなんて。ここまでくると笑うしかないよね」

『ごめんね光忠』

「悪いのは長谷部くんなんだから謝らないで。それに、皆が喜んでるからいいんだけどね」

わいわいと食卓を囲む姿を眺める。

今剣が岩融の唐揚げを奪ったり。
次郎太刀がお刺身を食べる横で、お酒を飲まされた御手杵が眠りこけていたり。
一兄が粟田口の皆にゆっくり食べなさいと注意していたり。

『宴会みたいになっちゃったね』

「そうだね。長谷部くんのおかげ、とも言えるのかな」

「俺の?」

「ああ、僕はたまにでいいけどね」

光忠の料理を手伝ったのだけれど、それでも量が量だった。

『ありがとう、光忠』

「……惚れ直したかい?」

顔を近付けてくる光忠の頭をよしよしと撫でる。

『ふふ、私は長谷部一筋だから』

「そうだ、主は渡さんぞ」

長谷部はそう言うが、光忠を撫でる手を止めようとはしなかった。

「つれないなあ二人とも」

こんな日常が、ここにいる皆の胸へと刻まれてゆく。

こんなに嬉しいことはない。



<終>


⇒あとがき


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