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刀剣男士と私の本丸事情
覚えて忘れて幸せに



『長谷部は何が好きなの?』

「俺ですか?そうですね……これと言って特には」

『そうなんだ』

ちょっと残念。

「主の作った物なら何でも好きですよ」

『そういうのは聞いてない』

「――俺は審神者様が好きです」

急に真面目くさって言うものだから、少し驚いた。

「だから、貴女の好きなものを教えてください」

『え?うん』

それから、と続ける長谷部。

「貴女の嫌いなものも全部教えてください。覚えておきますので」

『うん』

長谷部は覚えていてくれるだろうか。
いつか、私が死んでしまっても。

『でも、いつかは忘れてね』

「…………」

無言は肯定だろうか。

「……それは、主命ですか?」

『……うん』

涙は見せない、でも心が痛かった。

「主」

『主命だからね』

「……はい、主命とあらば」

長谷部は主命を果たしてくれるだろうか。
それとも果たせないまま、心に残り続けるだろうか。

「審神者様」

『なに?』

「俺はずっと御側におります」

『うん』

「主命でなくとも、貴女の御側におりますよ」

『……っ、うん』

そっと抱き寄せられて、涙が溢れそうだった。

「無理、しないでください」

『そっちこそ』

真の幸せを願いながら心に嘘をつく。
それは幸せだろうか。

「お願いですから、1人で抱え込まないでください」

それは無理な相談だ。

『うん、ちゃんと言うから』

精一杯の嘘を口にする。

「……主」

泣き出しそうなのは長谷部もだった。

『何で泣きそうなの』

「貴女もですよ」

二人して苦笑する。

「審神者様、俺は貴女を忘れません」

何度も忘れようとして、できなくて。
私もそうなれたらいいと思っていた。
でもそうなりたくないとも思っていた。

私は長谷部に深く傷を残してゆくだけではないと、そう思いたいけれど。

『それは主命じゃないから、長谷部の自由にしてね』

忘れてもいいから。
幸せになってほしい。

「俺の意志ですよ、俺は審神者様を忘れない」

ああきっと、長谷部は覚えていてくれる。

『ありがとう』

こんなに幸せなことはない。



<おしまい>


⇒おまけ


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