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刀剣男士と私の本丸事情
最後の握り飯



「お、向こうから長谷部が来るぜ」

疲れた顔の長谷部が見えた。

『鶯丸に、おはぎ握りを突っ込まれてね』

一応説明しておく。

「それで席を外してたのか、ははっ」

「戻りましたよ……また増えたな」

鶴丸を見てはあと溜め息を吐く。

「またとは何だ?俺はきみに握り飯を突っ込んだりしないぜ?」

「ええ、是非そうしてください」

笑顔で敬語の長谷部に鶴丸が怯む。

「は、は……今日は大人しくしくしておくよ」

「いい加減俺の手を煩わせないでくれないか」

何かあれば処理に追われるのは長谷部である。

「驚きは必要だろ?」

「不必要だ」

きっぱりと言い放って、おにぎりを手に取ろうとする。

「おや、きみが食べるのか」

そう問うものだから、長谷部が手を止めた。

「主の好まない物だからな、お前が食べるか?国永」

ついっと皿を押す。

「中身が何か知っているのか?」

「ああ、鶯丸が作るのを監視していたからな」

それでも変な物入ってたけど。

『監視してたのに佃煮?』

「見目はあれですが、うまいですよ?」

「だろう!話が分かるじゃないか長谷部」

ぱぁあっと瞳を輝かせる鶴丸。

『その見目がダメなんだってば』

「分かりました、覚えておきます」

覚えて、おいてくれるのか。

『……うん、ありがとう』

長谷部の言葉が妙に胸に染みて、長谷部を見つめ返した。

「おーい、俺の存在を忘れないでくれよ」

鶴丸はひょいっとおにぎりを取って、食べる。

「ん?これは栗の甘露煮か」

「ああ、栗ご飯風とか言っていたな」

おせちじゃないんだから。

『甘いもの好きなんだね鶯丸』

「甘党、というやつだな!」

どこかうきうきとした様子の鶴丸に嫌な予感しかしない。

「食べ物には悪戯してやるなよ」

長谷部が釘をさす。

「それはできない相談だぜ!」

キラッキラの笑顔で、鶴丸はぴゅーっと立ち去ってしまった。

『大丈夫かな鶯丸』

「死にはしませんよ」

そりゃそうだ。




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あきゅろす。
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