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刀剣男士と私の本丸事情
馬当番後の鶯丸



馬当番を終えた鶯丸から、日課となりつつある握り飯をいただく。

「今日も馬にペッ、とされた」

馬に握り飯を作る方が間違っているのだが。
……そこはあえて言うまい。

『うん、元気だして。美味しいよ』

中身は梅干しだった。

「食べるやつは食べるんだ、俺の作った握り飯を」

鶯丸自身も、もぐもぐと咀嚼する。

「食べる馬の方がどうかしている」

一緒に馬当番をしていた長谷部もまた、鶯丸の作った握り飯を頬張る。

「花柑子と望月は食べるぞ?」

「白毛は食わないな」

……食べないんだ白毛。

「白いからな」

納得だと頷く鶯丸。

『それ関係あるの?』

「あるぞ、王庭と祝一号もペッとする」

「たまたまだろう。主、お茶をどうぞ」

ずずいっと長谷部から差し出された湯のみを受けとる。

『ありがとう長谷部』

「俺の茶は」

「ないな」

と言いつつも、催促する鶯丸に長谷部は湯のみを渡す。

「あるじゃないか、あーうまいぞ」

お茶を飲んで笑顔になる鶯丸を見て、長谷部は苦笑した。

「茶があれば幸せか」

「当たらずも遠からず、だな」

三人ならび、縁側で握り飯とお茶をいただくこの図は一体……

『ところで、何でいつも馬当番の後におにぎり持って来るの?』

「馬はうまいと言わないんでな」

言ってほしいのか。

『美味しいよ』

6割くらいは、という言葉も飲み込んでおく。

『もうひとつもらうね』

次のおにぎりに手を伸ばして口元へ持っていく。
長谷部が凝視しているのに気付かないまま。

「主、それは」

長谷部が制止の声を発する前に、ぱくっといってしまっていた。

『甘っ!?』

中身はあんこだった。

「俺の好物が取られてしまったか」

これが好物……

『うへー、もち米じゃないのに何で詰めるの』

「うまいだろう?」

微笑まれて言い返せなくなった。

「不味くはない」

けど、美味しくない。

「主、無理をなさらず残してください」

「何を言う、うまいぞ?」

鶯丸は私の手からおにぎりを奪う。
それを長谷部の口へと突っ込んだ。

「ほら、うまいだろう?」

「!!!!」

ごくんと、勢い余って全部飲み込んだ長谷部に慌てて湯のみを渡す。

『大丈夫!?喉つめてない!?』

ずずずっとお茶を飲んだ後の長谷部からは、黒オーラが出ていた。

「げっほ、ええ……大丈夫ですよ」

ごごごごごと、怒っていた。

「黒いのに、俺の握り飯は気にくわなかったか」

鶯丸はさっと立ち上がって、その場を去ろうとする。

「逃げるか」

「逃がさんぞ」

がしっと鶯丸の肩を掴んだ長谷部。

「すぐに戻って参ります」

鶯丸を連れて何処かへと消えて行く。
長谷部の笑顔が笑ってなかった。

『う……ん、行ってらっしゃい』




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