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刀剣男士と私の本丸事情
長谷部の心情



「……はあ」

主の手を取った手で己の顔を覆う。

最近の俺は取り繕えていない。
主の寝顔を前にして愛しいと、触れたいと思う。

思うだけなら害にはならないが、行動にまで滲み出ている気がする。
気がするのではなく、出ているのか。

「主……」

触れられそうになって思わず逃げた俺を、貴女はどう思っているのでしょうね。

「俺は臆病者です」

拗ねている貴女は愛らしく、紅く色付く頬もなお愛おしい。
それとは対照的な、着乱れた浴衣の裾から覗く白い脚が鮮明に思い出される。

あのまま襖を開けて誰かに見られていたかと思うと、憤りを覚えた。

「俺は、」

取り縋ってその滑らかな肌に寄り添いたいと、不埒な事を考えているんですよ。

刀でありながら人間の貴女を想い、あまつさえ欲望を持て余している。

とはいえ、人ではなく道具としてどれだけの時間を経て来たことか。

「――刀なんですよ、主」

付喪神として人型をとっているこの状況が酷く煩わしい。

刀として出会っていたのなら、こんな思いをすることなどなかった。

最初から手に入らないものならば、感情など……
気持ちなど……諦めもついたというのに。

いや、それでも俺は貴女をお慕いしていたに違いない。
形は違えども、最期まで御側にいたいと。

手を伸ばせば届く距離にいるのが、こんなにも厄介なことだとは。

けれど、俺の気持ちが貴女の為にはならないことを理解はしているんです。

貴女は人間で、俺は付喪神だ。
ならば答えはひとつのはず。

ですがそれでも、それでも俺は――

だから触れるのは恐ろしい。
きっと俺は、貴女を傷付けてしまうでしょう。

「審神者様……」




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