刀剣男士と私の本丸事情
恋人としての愛情
『私たち、恋仲だよね?』
「審神者様が求めてくださる限りは、俺は貴女の恋人です」
ちっとも嬉しくない。
『じゃあもういらないって言ったら?』
「そんなこと、貴女は言えないでしょう?」
そう、言えない。
言えないくらい愛してしまっている。
『当たり前じゃない!』
それに彼の過去を考えると、手離せるはずもない。
私は信長みたいに長谷部を手離したりなんかしない。
「主」
優しい声音が私を呼ぶ。
「何か勘違いしているようなので、言わせてください」
『え』
勘違い?
「俺は貴女の為に何かをやり遂げられることが嬉しい、だから尽力するんです」
『うん』
「今回の件に関しても最初こそ腹が立ちましたが、貴女が楽しそうに『シュメイトアラバー』と言っているので、どうでもよくなりました」
それは、愛だろうか。
『じゃあ何で流行らせたのはって聞いたの?』
どうでもいいなら聞く必要もない。
「俺には出来ない芸当だったので、今後の参考にでもと……まあ鶴丸と聞いた後でアレを参考にしようとは思いませんが」
酷い言い様だ。
でも長谷部らしい。
『なんだそっか。ごめんなさい、色々言って』
「いいえ、主は悪くありません……悪いのは俺だな」
『え?』
「愛情、足りてませんか?」
ふっと切なげに笑う長谷部に、胸が苦しくなった。
『あいじょう……鍛刀回数のこと?』
「何です?それは。恋人としての愛情ですよ」
じりっと迫って来る長谷部に後退する。
『たっ、足りて……る?』
でも最近構ってもらってないような。
池田屋の出陣で忙しかったし。
『足りて……なかったら?』
「そうですね」
長谷部の手が私の足を捕まえた。
「たっぷりと注いであげますよ」
長谷部の言い方が、違う意味に聞こえてしまって。
『な、にを?』
「 愛 情 です」
甘い雰囲気に耐えられなくなって、逃げ出そうともがく。
『っは、長谷部!?』
「はい」
足を押さえられて立ち上がれない。
『離して!』
「嫌です」
即答された、主命はいづこへ。
『何で!?』
「離せば逃げるでしょう?それにさっき『我慢しないで』と仰ったのは審神者様ですよ」
言った、言ったけども。
『こっちの意味じゃなくってね!?』
「こっちの意味でも忠実にしつこくお仕え致しますよ、性分なので」
それ、お仕えって言わない!
『うわー、助けてー』
「何からですか、まさか俺から逃れようなんて思ってはいませんよね」
にこにこと笑う長谷部に総身が粟立つ。
『じゃあ我慢して!?』
「それも嫌です、前言撤回は無しですよ。やり直しは効きませんから」
忠実なるしもべ、もとい長谷部にしてやられた。
『ひいひい言わされる!』
「お望みとあらば、何度でも」
その日極上の笑みを私は見たのであった。
『きゃー長谷部に襲われるー』
「棒読みですよ審神者様」
もうどうにでもしてください。
<おしまい>
⇒おまけ
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