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刀剣男士と私の本丸事情
主命とあらば



長谷部について行くと、長谷部の部屋に着いた。

「どうぞ。見苦しい部屋ではありますが、お入りください」

長谷部の部屋は、書類やら本やらが大量で執務室と化している。
そこに足を踏み入れ、長谷部の前に鎮座した。

「それで?……祭りのこととは一体なんですか」

『え、国俊とのことは』

てっきり抱き合っていた件について、言及されると思っていた。

「相手が愛染では、そういう心配はしませんから安心してください」

『なんだ、拍子抜け』

少し笑って、居ずまいを正す。

『お祭りをね、しようと思って』

「急にどうしたんです?」

聞かれて、改めて自分の不甲斐なさに嫌気がさしてくる。

『最近夜戦で短刀と脇差達を駆り出してるじゃない?』

「はい」

『特に三条大橋に出陣してるのに、明石は見つからないし』

そこまで言うと頷く長谷部。

「ああ、そういうことですか。同じ来派の愛染や蛍丸の気晴らしにと」

『そういうこと』

夏も近い今だからこそできる催しもある。

「貴女は俺達のことばかり気にしていますね」

『え?そうでもないよ、私もお祭り……というか、皆で年間行事がしたいなと思ったのもあるし』

それは変なことだろうか。

「そういうことにしておきましょう」

『本当なのに』

祭りについて、いつ、どういう物が必要で何をするのか一通り話し合う。

「ところで主」

『なに?』

「シュメイトアラバー」

まさか長谷部本人が言うとは。

『シュメイトアラバー?』

「変なものを流行らせたのは貴女ですか?」

『あー、流行ってるけど私じゃないかな』

言い出したのは鶴丸だ。

「誰かご存知ありませんか?」

……いや、言い出したのは鶴丸だけれども。
そのあと流行らせたのは私?

『……いやいや』

楽しくなって鶴丸と言い合っていれば、他の皆がそれを見て真似して……うわぁ。

『ごめん、私かも知れない』

「主が?」

心底意外そうに聞く長谷部。

『言い出したのは鶴丸だけど』

一応付け加えておく。

「あの男ですか、主はそれに便乗しただけなのでしょう?」

『うんまあ』

「なら構いませんよ俺は」

驚いたのは私の方だった。

『怒ってないの?』

「どこに怒る必要が?」

そうだった……長谷部の第一は、私なのだ。

「主に楽しんでいただけるのなら、俺は何でも致しますよ」

『長谷部、それは何だか違うよ』

「はい?」

不思議そうに私を見る長谷部の目は純粋だ。

『自分が嫌なことなら、私のことなんか気にしないで嫌って言って』

「俺は嫌では」

『我慢しないで』

連日長谷部の部屋の明かりが付きっぱなし、ということも多々ある。

『疲れたら休んで、もっと自分を労ってほしい』

そういう時は差し入れに行くのだが、言っても直らないのが長谷部だ。

「俺は刀ですから、疲れても死にはしません」

『うんそうだね。疲労がたまるとどうなるか知ってるのにね』

嫌味を飛ばすが、暖簾に腕押しだ。

「少し休めば大丈夫です」

『……主命とあらば、何でも言うこと聞くんじゃなかったの』

「主命とあらば、如何様にも」

頭を垂れる姿はまるで家来のよう。




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