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「うわお前それキャバクラ並みじゃん!ぼったくりだよぼったくり!」
大学の学食にいるというのに、周りを顧みずぎゃはははと大声で笑う西野。
…失礼な奴だなー
読んでた雑誌を畳んで反論する
「ぼったくりじゃねーよ。こっちの努力とか準備見積もったら妥当な時給だっつの」
「いや1時間4000円だろー?いやー馬鹿な子供持ったら親も大変だ」
「やめてくんないかなーその言い方。だから親の血と汗と涙の結晶と引き換えに、ちゃんと子供の成績上げてんの。文句あります?」
「ないわー流石っす雄太センセー!」
西野がうざったいくらいに笑い転げている。相変わらず笑いの沸点が低い奴だなー。スルーしてカフェモカを啜る、あ、美味い。
「もう2年目だっけ?個人でカテキョし始めて」
西野の横で冷静に質問したのは、同じゼミの女の子だ。何回か話したことあるけど、カテキョやってるとか言った覚えないから、たぶん西野が洩らしたんだろな。うざったい奴だ
「あーうん。前大手に居たんだけど、稼いでも吸い取られるから手持ち少なかったんだ。ん、だから自分でしよ。みたいなね安易っしょ」
「そんなことないよお!へ〜でもそなんだ〜やっぱり今までの生徒みんな成績上がって、難関に合格してる感じ〜?」
自慢になるかもしれないけど、あながち間違いでもないし面倒なので適当に頷いておく。
…いや、例外もいたんだっけ
「えーでもさー救い様のないお馬鹿さんもいるだろー」
黙れ西野。
…でも正直その例外には手を焼いてるか。
「救い様のないお馬鹿さんってゆーか…むしろ賢いとは思うけど、よく分かんない子はいるかなー」
何考えてるかあんまり掴めない変な子。別に嫌いじゃないけど。てゆーか教え子に嫌いも好きも、商売だから無いけど。
「へー雄太センセもお手上げなくらいの?」
「…まだこれからだし。その子の成績も伸びるよーにするさ」
俺は、達成するのが難しい程、燃えるタイプだ。あんまりそのための過程とか苦労は外には出したくない。や、西野は付き合い長いし気付いてるかもしんないか。
「あ、なー西野、今何時」
「今あ〜?えーと…あと少しで6時だけど」
えっと、こっから駅まで走って5分、地下鉄乗って…15分…今からいっても余裕で間に合うよな
そう思いながらも遅刻はまずいので自分の持ち物を片し始める
「もしかして雄太、今日カテキョの日すか?」
「ん、そーすよ。」
あーカフェモカ飲みかけだ。捨て…ないでいいか、歩きながら飲も
「おいおい今日夜飲み会するから空けとけっつったじゃねーかよー」
「あーごめんごめん忘れてた」
あー鞄のチャックが閉まらない。デザインは好きだったけど如何せん実用性が乏しいんだよなこれ
「もおーそおだよー女の子は笠原くんに会うの楽しみにしてるのに…休めないの?早く切り上げるとかー」
「ん、無理かな」
もいいやチャック閉めなくてもしなないし
「じゃ俺いくわ、ほいじゃ」
立ち上がったところで、カオリ?ちゃんに、いきなり腕を掴まれた。なに、なにこの人
「いーじゃん早く抜けたら二次会三次会には来れるでしょー?」
「そーだそーだ!カオリちゃんもっと言ってあげて!」
上目遣いでニッコリ微笑むカオリちゃんと、後ろから野次をとばす西野。仲良さそうだね君ら…
西野ならうざいから放せとか言っても大丈夫だろうけど、さすがに女の子には言えないか
「ん、また今度ね」
カオリちゃんの顔を覗きこんで微笑む。すると彼女の頬が赤らむのがわかって後悔した。つい昔のクセでやっちゃうんだよ、…あーばかだ
「…じゃ俺時間やばいからばいばい」
「ちぇ、俺らと教え子どっちが大事なのよっ!」
俺は尚も食い下がる西野の言葉に疑問を覚えた
どっちかだって。
馬鹿らしい。
「…対象云々じゃないよ、おしごとが大事ー」
後ろからまだ薄情者とかごちゃごちゃ聞こえるが、俺は無視して学食を後にした。
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