[携帯モード] [URL送信]
6


「えっと…どした?」

僕は素直じゃないので、たぶんゆーくんの顔を見たらなんも喋れなくなると思う。から、後ろを向いたまま言うことにした

「あの…この前友達にTシャツを貰って、…貰ったんで、その…いつものお礼というか、これからお世話になるので」


「…くれるってこと?」

思ったよりも声が近距離で聞こえたので驚いて振り向く。ゆーくんは椅子から立ち上がって、僕のすぐ後ろに立っていた。いつも座ってるので意識しなかったけど、意外に身長が高い。

「あ、はい。どぞ」

突き出すようにTシャツを渡す。この人の格好いつもラフだけどセンス良いから、もしかしたら突っ返されるかもしれないと不安になる。


「あ…じゃあ、ありがと」

思いがけない言葉が聞こえて、はっとする。ゆーくんは、いつもの笑顔の2.5倍くらい柔らかな笑顔で、それを受け取っている!なんてことだ!

「や、でも貰いモンかよって感じですよね、ほんと着るなり焼くなり捨てるなり好きにしていいので…」

岡田ごめん明日パン奢るから許して。…あんまりゆーくんが嬉しそうだから、急に照れ臭くなって余計なことを言ってしまったんだ。照れ隠しが誤解を生むこともあるのに。


「いやいや、捨てないでしょ。すごい、嬉しい。」

やめてそんな笑顔でこっちみないで、悟の顔がほてる!


「い、い、い意外にも喜んで頂き僕も…友達も、光栄というか」

「意外にも、て…人を冷徹人間みたいにー。俺結構真心とかそーゆーの弱いんだよ?」

い、意外すぎる。でもさっきの反応で、あながち嘘じゃないことは十分すぎるくらい分かった。


…ほんと、僕はこの人の何を見ていたのだろう



「てかこれインポートもんの限定品しょ。最近のこーこーせーはお金持ちだね」
「はぁ…そうなんすか…」

少し見ただけでそこまでわかるとは…やっぱりおしゃれとか詳しいのだろう。今ゆーくんが着てるパーカーもジーパンもたぶんいいやつなんだろうなー…僕はといえば、よれたトレーナーに、下は毛玉のできたスウェット。もっとマシな格好しとくんだった。恥ずかしい

「じゃしまっとくね、さんきゅな」

僕の顔を覗き込んでもう一度さっきの笑顔で微笑む。直視できる訳がない。僕が女の子なら「抱いて!」と言ってしまいそうだ。


でも、僕は、男だから。



「…では先生、さくさく勉強始めましょうか」

「お、君にしては珍しく能動的だね。いいことだー」

ゆーくんは口笛を吹きながら机に向かったが、僕は自分で言っておきながら切り替えが出来なくて。椅子に座ったゆーくんの髪の毛を只ぼんやり見ていた。



[*前へ]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!