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「俺の血液型?普通にO」


教科書を捲りながらゆーくんはあっさり言った。岡田の予想は見事に裏切られたことになる。ざまーみろ


「ですよねー…いやなんかO型ぽいなーとか思ってたんですよー僕もー」


ん?とゆーくんが首を傾げる。前にもこんなことあったような…

「思ってた?大雑把で変なとここだわって目立ちだかり屋とかいう、典型的なO型パターンに当てはまってるってこと?」

やばい、予想外に食いつかれてしまった。やばいぞこれはまた言い負かされる予兆じゃないのかこれは。無意識にシャーペンを持つ手が、汗で湿ってくる

「いや…嫌味とかではなく…なんとなーくなんとなーくです!フューチャリングで」

「フィーリングねたぶん。誰かとコラボったみたいになってるよ」

ゆーくんの着てるグレーのパーカーのフード部分を引っ張ってやりたい衝動を抑える


「だってさーおかしーよね?地球に住む全人類をたった4つに区別するってさー普通ブレが生じるし例外がある筈じゃん」

「おかしいかもしれないです」

「だよねー。統計学に基づいてるから間違いじゃないとか言う人もいるけど、医学的には根拠は薄いんだ」
「う薄いですね確かに…はい」

どうでもいいけどゆーくんは、「〜なんだ」て語尾の時、なんだ↓と下がるのではなく、なんだ↑て最後が上がる。…ほんとどーでもいい発見だ


「要するに思い込みだよね。ちっさい頃から、血液型に対する性格のパターンをこれでもか!って刷り込まれることで自分はこんな性格なんだな〜って勘違いしてその通りになっちゃうんだよ」

「僕二重人格とか言われるんですが、じゃあこれも思い込みですか?」

あははと口を開けてゆーくんは笑った。横顔もやっぱり男前だ


「んーてかみんなある程度多重人格者じゃない?どんな時もどんな人にも平等に同じ態度で接することが出来る、仏様みたいな人いないっしょ」

確かに考えてみれば、意識的に違う態度に変えるんじゃなくて、いや勿論意識的に変える頭の良い人もいるのだろうけど。多くの人は、たぶん無意識に相手を判断して、付き合い方をそれぞれ変えているかもしれない

「僕」とゆーくんのように。
「俺」と岡田のように。


「という訳で結論はどうしましょうゆーくん」

「んー…ならば、《兎に角人は分類されることで存在を確認して安心する、弱い生き物だ》という結論でどーでしょーか」


「…極論ですな」

「あは、そーかもね」

少し可笑しそうに笑うゆーくん。岡田の笑い方を「ニカッ」と例えると、ゆーくんの場合「ふにゃ」って笑う感じだ。ゆるい。
「あ、なんか病んでる人ぽく感じたかもだけど、そーは言っても俺人間は好きなんだよね。面白いから」

「面白い…ですか」

ゆーくんが本当に楽しそうに言うので僕も人間について考える。うーん…僕は、忌々しいとか面倒臭いとか、どちらかというと負の感情ばかり抱くけどなー…

「うん。面白くない?なんかさ、今死んじゃいたいくらいの不幸のドン底にいる人もいれば、死んでもいいくらいに幸せを噛みしめてる人もいてさー、なんか、面白いじゃん」

頭の良い人の考えることはやっぱり違うなー…と小学生の感想みたいに単純な思考で思った。

「なるほど…そー考えたら面白い、かもしれないです」

ゆーくんがこっちを見る。口がほんのり…アヒル口?になっているが決してぶりっこぽくなく…犬みたいでかわいい

「お、まじでかー。なんか少しでもそう思ってくれたら嬉しいかも。友達に話してもお前変だよなーって言われるだけからさーひどいよねー」

いや、変だよ。

と心内でゆーくんの友達の言葉を肯定するけど、でもなんか、なんか話を聞いてみたらなんとなーくそれこそフィーリングで、分かった気がしたし、



そんな嫌な人じゃないのかもしれない、と思った。


「ところでさ、君これなんて読むの?ノートの字が雑で読めな…

「あ!そうだった!」

僕は岡田に貰ったTシャツのことをふいに思い出した。あ然とするゆーくんは気にせず、椅子から立ち上がる。畳んでおいた緑色のTシャツをそっと拾い上げて、感触を確かめた。よし洗濯して臭くない筈だし、アイロンもばっちりだ。



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