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「さーちゃんあれだ…カテキョ?だよな、そいつ付けて頭良くなってきてんじゃね?すげーな!」
「やめろ岡田、そこで俺を誉めても自分の恥になるだけだぞ!」
岡田いいやつだなーなんかずれてるけども…
「さすがカテキョ持ち言うこと違うなおいおい〜」
「おいカノジョ持ちみたいな言い方やめて」
ここまで喋って、また暑さと格闘するために2人とも無言で箸をすすめる。粉ふき芋を克服したと思ったら、おくらの和え物ぽいのが入っていた。なんでこのくそ暑い中で、粘こいの食べなきゃいけないんだよ、母さん。
「カテキョどんな感じなの、楽しい?」
顔を上げる。弁当から目をそらさずに岡田が言った。俺も弁当(おくらの和え物ぽいもの)に視線を戻す
「楽しいわけないですよ、僕、毎回…し、しにそうになる」
「…何そのキモい話し方、さーちゃんが僕だって。やめろよ…食べたウィンナー戻しそう」
「や、カテキョの前では緊張してってゆーか、なんかなっちゃうんだよこんな感じに」
ほんと無意識に圧力かけられてるんじゃないかってくらいに、恐縮しちゃうんだよな…情けない
「へーそんな怖い奴なの、センセ。」
「それが違うんだよ!むしろふわふわ浮いてて、ヘラヘラしてる感じ」
「浮く?それはさーちゃんだろ」
「だからーそっちの意味じゃなくて…ふわふわ…ゆるーいんだよ、ゆるい!ちなみに俺だけじゃなくお前もクラスで浮いてんだかんな!」
「うーんでも今の話聞く限り、そいつそんな怖い奴には思えねーけど」
ごもっともだ。僕にも自分の反応が分からないから困る。でも予想するとしたらば
「やっぱり完璧なとこかもなー」
「完璧?」
「頭よし性格よし顔よしのすげー人なんだよ。だからその人の前になるとすごい俺自身がちっさく感じるといいますか」
あの男の笑ったとこを思い出す。そして慌てて掻き消す。
「なるほどー劣等感からくる怖さですねじゃあ」
箸で摘んでたおくらがポロリと机に落ちる。弱味を言い当てられた気がして、僕は自然と眉根を寄せた。でも気を取り直して、なんとか言葉を紡ぐ
「さー…わかんないや」
時々岡田は分かってるのか分かってないのか人の痛いとこ突くから困る。しかもあんまり目を向けたくないとこを。その度に、俺は、岡田が言われたくなさそうなことは言わないのにと腑に落ちないような気分になる。
「でもさ、安心しろ、さーちゃん!」
岡田が机を叩いたので、仕方なく顔を上げる。笑えてる筈だ。
「なにを安心するんだよ?」
「いくら完璧でも人間だし欠点があるだろ、だから大丈夫だ!」
またそんな大雑把な…いやでもそこが岡田のいいとこだもんな。
「欠点…わるいとこかー…うーん…あ、若干口が悪い!」
「それだ!やったなさーちゃん!」
「だからって俺に何ができるんだよばかやろー…」
ちょうど僕の言葉尻に、チャイムが鳴った。あと10分で5限目開始だ。ああ、結局おくらの(以下略)食べれなかったか
「あわわわ助けてさーちゃん前が見えない」
「お約束にシャツ前後ろ逆だ、岡田」
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