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「もー!!おーそーいーよー!窓からヨッシー達見えたから迎え来ちゃったじゃん!」

「わりわり!トイレ込んでてさー」

「嘘つきー!」

「はは」

突然僕らの前に現れた、今日の合コンのメンバーと思われる女子と軽やかに会話するヨシヒサ。認めたくないけど、ヨシヒサのあんちくしょうが光って見える。さっきまで軽蔑の視線を一身に浴びていた生き物は、仮の姿だったのだろうか。うん合コンの王子という異名をつけてもなんら異論はないだろう。うん、ダサカッコイイ感じが彼にぴったりだ。一人で納得していると、後ろにいるはずの岡田がえらく静かなので肘で脇腹をつつくいて耳打ちする。

「なーやっぱアイツすげーな、全然違和感ないもん。合コン王子やりおるぜ。ぷぷ」

「ダメ。もうさーちゃん、俺はセリカだけはダメだ。無理。岡田帰る」

「帰るって何を今更…」

岡田が目の前の二人から目を逸らさずに言うところをみると、今もヨシヒサの横で無邪気に笑っている、あの子が例の『セリカ』か。確かにそこらのモデルよりもかわいいといっていいほどの容姿だ。きゃいきゃいとはしゃぐ声も女の子って感じだし。だがそれよりも頭の上に乗った、でっかいリボンに、僕は釘付けになる。

「今更っつったって嫌なもんは嫌なんだよー」

「…大丈夫かな。あれ重くねーのかな」

「大丈夫じゃねーよ。岡田こう見えて赤ちゃんの肌並にデリケート且つ敏感だから。あんま見かけで人を判断するなよさーちゃん」

全くかみ合ってない。しかもなんか前も似たようなこと言われたような…。いや、それより岡田がここまで誰かに対して拒否反応を示すなんて、ホント珍しいぞ。逆にセリカちゃんに興味が湧いてくるじゃないか。


「なあ、そんなセリカちゃんってやばいん?」


「知らんけど。見るからに性格悪そうだろ」

岡田くん、見かけで判断、してるよね。






「じゃっ!かーんぱーい!!!」

それぞれの持つグラスがぶつかり、清涼感のある音を立てる。女子達のグラスの中身は人工的な可愛さの色をしたカクテルチューハイ。岡田たちはたぶんビールだろう。未成年者の飲酒は法律で禁止されてるのを知っていますか?と一人一人問いただしたくなる。まあなるだけだけど。だから、僕はといえばこっそり一人だけグレープフルーツジュースだ。注文するときに斜め前の女の子が、えって顔してたけど、気にしていられない。だって人前で酔いたくないし。そう僕は極端にお酒が飲めないのだ。こんな場だからこそ自我だけは保っていたい。

女の子達が、おいしーい!と場の沈黙を防ぐような明るくはしゃいだ声を出す。合コンの王子も大袈裟にプハーうんめーとか言っちゃってる。岡田は目の前の女の子と何度もグラスをぶつけ合って笑ってる。そんな中で、黙ってグレープフルーツジュース(無添加)をちびちび運ぶ僕。あほくさ。なんだこれ。しかも無駄にジュース美味い。

「えーていうかーここらで自己紹介やっちましょーよ!」

「いいぞーヨッシー」

「もっとやれヨッシー」

岡田に続いて、ヨシヒサを煽ってみる。僕がヨッシーと言った瞬間、王子が口の端をヒクつかせるのを僕は見逃さなかった。ざまあみろー

「えーなんか男子仲良いねー!なんかたのしー!えっとお、じゃあセリカたちから自己紹介しまーす!」

本当に楽しいときは楽しいなんて口に出して言わないはずだ。…とか皮肉な考え方をするのは僕だけなんだろうか。みんな一様に笑顔笑顔…

開始10分、早速帰りたくなってきた。宴はまだ始まったばかりだ。




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あきゅろす。
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