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「−−あと……カテキョ、とかさ」


「カテキョって…あっ!あの例のさーちゃんと同じAB型ってゆってたやつな!」

かなり音量を絞った筈だったのに、岡田の耳にはしっかりばっちりくっきり届いたらしい。

「…ちげえし。カテキョO型だったし〜ざまあみろハッハー」
「血液型で人を判断するなよさーちゃん。あれ、そしたらさ高校生になっても4人しか増えてなくないか?」

…あえて黙殺することにした。

そうなのだ。僕は、カテキョであるゆーくんのメアドと電話番号をゲットした。それは2日前、ゆーくんの夢について尋ねたあの時のあとだ。教科書に記しをつける作業をしていたゆーくんの、唐突に発した言葉がきっかけだった。




「君の連絡先もらっていーかな」



僕はカリカリとシャーペンを滑らせていた手を止め、正面にあるゆーくんの顔を見上げた。動悸が一気に激しくなる。えっそれは、ん、どういうことだ?何も言わない僕を見つめながらゆーくんはまた口を開く

「だってさ、君んちの電話にしか君に連絡とる方法ないよりも、もー直接君に連絡したがまどろっこしくないじゃん。君もそっちのがよくない?」

「…たしかに」

そりゃそうだ。何回か連絡がすれ違うときがあったし、連絡先くらい最初に交換しててもおかしくないことだ。だけど…なんだそれだけかと、ゆーくんの言った『連絡先を交換する理由』の真っ当さにがっかりする自分がいた。僕の微妙な表情をどう読みとったのかゆーくんが坦々と言う


「…あ、嫌なら全然構わないんだけど。今のご時世個人情報気にしないほうがおかしーしね。強制じゃないから安心して」

決して突き放すような言い方でもないが優しくもない抑揚のない声だ。僕に…選ばせようとしているのだろうか。カテキョと生徒が連絡先を交換するなんて、多分物凄く普通のこと…だよな。なのになんでわざわざ僕に選ばせるんだろう?ゆーくんなりの生徒に対する気遣い?いや他になにがあんだよ。…考えすぎかな。ゆーくんの言葉に対しては頭の中で吟味しすぎて、変に考えあぐねてしまうようだ


「や、連絡先教えます。ないとゆーくんも僕も不便だろうし」
ゆーくんが探るように僕を見る。負けじと僕もゆーくんのから目を逸らさない

「…じゃあアドレス教えとくから。勉強のこととかでなんかあったら、遠慮せずにメールして」


『とか』の単語がやけに大きな容量で頭の中にインプットされた気がした。

…こうして僕のアドレス帳にゆーくんのアドレスが加わり一歩近づけて嬉しいような、近づいた距離を警戒するような、そんな相反する思いで僕は携帯のアドレス帳のゆーくんのページを眺めていた。いや食い入るように見つめていたの間違いか。
岡田が止めるくらいだからよっぽど不気味に映っていたのだろう

「お、なんだー?つーことは仲良くなれたっぽいじゃん。メールしてんでしょ」

「うーん仲良く…なったとはまだ言えないけど、前よか見方変わったよ。岡Tのおかげかなありがと」

「いやいや岡田Tシャツが架け橋になれたんならそれだけで…俺…俺……あ〜腹減った購買行かねー?さーちゃーん」

でも喜ぶにはまだ早いんだよな。ひとつ大きな問題があるんだよ。


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