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…残されたのはなんだか気まずい、僕と岡田。今更ながら、大人気ない態度をとったことに対する罪悪感が存在を主張し出す。分かってる、空気を壊した本人が突破口にならなければいけないんだ、ほら言えよ悟
「あの…さっき、俺、なんか邪魔した」
「…え、やいいよ。ヨシヒサうざいからなー許してやってな」
違うんだそんなことで不機嫌になったんじゃなくて、お前の気遣いを、優しさを、無碍にする自分が情けなくてだから
「いや、違うくて、そのさ…
「なーそれよりさーちゃん、さっき職員室行ったのて、何だったわけ?」
「え、あー進路の紙のことで。あと提出してないの何人かだけらしくて」
「中学生日記かよ!」
不意打ちの質問に、つい答えてしまう。しまったこれが岡田のテクニックじゃないか。
僕は物事の終わりに鈍感で、あんまり切り替えも上手くない。でも岡田はいつも「もうこの話は終わりです」と、自然に会話の方向を転換する。転換の上手さは、その場の雰囲気とかもで。こっちか謝らなくて済むような、そんな自然な転換の仕方で
「や、うんそーなんだよ、でさ」
「中学生日記まっさかり」
「…おー中学生日記まっさかりだよ。取りあえず好きじゃない奴を、日記に見せかけた死を呼ぶノートに書き込むわ」
「さーちゃんそれ違う中学生日記違う」
…―だめだ、面倒くさい。もういいか、別に。岡田も後から掘り返されるのが嫌いとか前言ってたし。うんそうだ。今謝ってもまた空気を壊すだけなんだし、黙ってたがいいんだ
頭の隅で「お前は岡田に甘えすぎだ」って声がした。でもノイズ混ざりのその音は、僕の発音器に伝わらなくて、外に発せられることはなかった。
「てゆーかウケる、その何人かに俺も入ってるわ。あははー中学生日記まっさかり」
「え、お前も書いてないにょ」
「あ、今さーちゃん《にょ》っつった。《にょ》だって。」
「…うるせーにょ噛んだんだにょ…」
「うは、ダルセーニョて音楽記号あったよな」
「わかったわかったから。答えろよ、な、岡田も書いてないわけ」
岡田が、本格的に笑いのツボにはまったら、暫くはまともに会話出来なくなるので急かすように聞く。でもこいつ決まってた筈じゃないか、なのになぜ?
「だって書いてないもん」
「真面目に言えってば…」
「あ〜だからー…さーちゃん、人生一回きりなんだぜ?」
「うん。で?」
「だから、一回きりなんだよ。一回きり!しかもその人生も100年くらいしか残りないんだぜ!?」
命の残余の見積もりが甘過ぎる気もするけど、放っとく。
「…要するに進路を迷っているとゆーこと?」
「まあね。俺、先生になろっかな〜とか思って。」
胸ポケットから取り出したダテ眼鏡をかけ、上目遣いに岡田は言った。さまにはなっているが、なんだかエロ教師みたいだ
「もちろん担当教科は」
「保健体育な。よし考え直せ」
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