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職員室から教室に戻ってきたら、岡田が3組の奴と話してた。岡田は男女問わず顔が広い。それは彼の長所だし僕も見習うべきとこだ。…だけど、一応、親友という立場にいる僕は、内心は穏やかじゃなかったりする


「お、さーちゃんお帰り」

ドアのとこで突っ立ってた僕に気付いた岡田が、歯を見せて笑った。こっちおいでと手招きしてるけど…

「よっ、さとちゃんおひさ」

僕の席に座ってる3組の奴をどーにかしてくれ。しかもさとちゃんて何だよ。初対面だよ。さーちゃんならまだしも、馴れ馴れしいにも程があんぞてめー

とりあえず2人のとこに歩いていって、未だにへらへらしてる奴の前に立つ。「そこ俺の席なんだけど」と言わんばかりに。

「おいヨシヒサ、そこさーちゃんの席だぞ。どけいどけい」

「あっそうなの、ごめんごめん」


・・・・


どけよ!!
笑顔なんか返さなくていいんだよ!厚かましい奴だ!厚かましい僕が思うなんて本当に厚かましい奴だ!


「おいヨシノリくんそこ俺の席なんだよだからどいてくれないかな」

「ヨシヒサだよ、でも俺昨日頑張りずきちゃって腰痛くてさー」

「…何を?」

「ナニを」

「キモ。ヨシノリくん絶対腰振る時フンフン言う奴な。キモ」

「何俺なんでこんな嫌われてるのヨシヒサだし」
「まぁまぁ2人とも落ち着け。そんな喧嘩せずによー、2人仲良く座ればいいじゃんか、な?」

・・・・・


狭い。名案だと思ってるのは岡田だけで、僕と相手はすこぶる不快だ。しかも成り行きで、僕が相手の膝の間に座っている。相手の鼻息が頭上にふりかかるし、何より暑苦しい。実に不快極まりない。

「ちょやめろよ鼻息が…こそばゆい」

「…仕方ねーだろ」

「息を止めろ」

2人で攻防を繰り返していると、岡田が思い出したかのように口を開く

「あ、でどーすんのよメンツは」

岡田の目線は僕より上にあるので多分後ろの奴に話してるんだろう

「もー女子は集まってんだけど、男子がダメ。みんなベジタリアンばっかでノリ気じゃないからさー」

どうやら合コンのセッティングについて話してるようだ。…うんこしてたことにして、もっと遅く帰ってくりゃよかった。自分の知らない話をしてる時ほど疎外感を感じる時はない。岡田といるとざらにあることだが、毎回居心地の悪さは慣れない。
全然気にしてないふりをするために、後ろの奴の手首にじゃらりと巻き付いている、ミサンガやウッドビーズの腕輪たちに視線を落とす。


「草食くんか…健康な男子がノリ気じゃないとは問題だなー」

「そうそう。女子は男のレベル落とさないでって言うし、幹事のボクとしては、もー困りんこ!」

「キモ。黙りんこ」

「お前が黙りんこ!」

気持ち悪い語尾をつけるアホに、僕が横槍を入れたから、そのアホがフンフン鼻息かけてきやがった。まじでやだ


「じゃあ…さーちゃん来ない?」

…きた。

「いーよ、迷惑になるだけだし」

岡田がじっとこっちを伺う。…つい口調が鋭くなってしまった。なんだよ今更。格好よくもないし女の子との会話に積極的じゃない僕が来ても、どーせ迷惑だろ…岡田なりの優しさが分かってるから、尚更、惨めだ。


「まー来てもいいよ、大丈夫、俺と岡ちんで下がったレベルはカバーするから」

「…行くかボケ。つーかお前の大事なとこがさっきからケツに当たってんだよ。興奮すんな」

「ぜってー呼ばない!…じゃ岡ちんまたメールするから、決まりそうなら連絡してー」

「おー」

僕の後ろから奴が離れた。新鮮な風が背中の後ろを通り抜けて清々しい。奴はそのまま颯爽と教室を出て行った。

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